『 実力とプロセスの法則 』
もう使い古されたような言葉に感じるほど、私たちの周りには“実力主義”という言葉が浸透している。だが“実力”とは一体何なのか、私たちは分かっているだろうか。ともすれば結果として出た実績そのものが“実力”だと捉えてはいないだろうか。“実力”の意味について、少し考えたいと思う。
まず、例を挙げてみよう。メーカー系列の販売会社に勤めていたDさんである。Dさんは同業メーカーA社の営業部門へ転職を希望していた。A社は業界内では老舗にあたる人気企業。Dさんの転職活動は、経験内容もキャリア年数も拮抗する有力候補者4人とバッティングする、厳しいものとなった。
他の4人も、Dさんと同等かそれ以上の実績をあげていた人々だった。しかし、Dさんは選考こそ時間がかかったものの、最終的にはただ1人内定したのである。一体何が決め手となったのか?拮抗していた中でDさんの何が抜きんでていたのか?私はそのあたりの話をA社の人事に聞いてみたのだった。
やはり、Dさん以上の実績をあげていた人とDさんとどちらを採用するか、A社は最後まで悩んだらしい。人事は私にこう言った。「Dさんだけが、実績に至るプロセスを詳細に語ったのです」と。他の4人のうち3人は、優秀な実績をPRした。もう1人はプロセスに関して補足的に触れた程度だった。
その中でDさんは経歴書にまとめた実績について、どんな工夫を経て達成したのか説明したのだという。例えば過去の相談内容を顧客毎に整理し、それを踏まえた提案や事例紹介を行なったこと。未共有だった見込客情報をデータベース化し、協力体制を確保した上でチーム成績をアップしたこと、等々。
「Dさんなら単なる“調子”の問題でなく、再現性のある仕事ができると考えたのです」と人事は言った。実力を評価されるには、確かに実績があることが大前提である。だが私たちの周囲でもしばしば見られるように、認められる実績を出す人は、何かしら他とは違う工夫をプロセスの中に入れている。実績と、その裏付け。2つがセットになってこそ実力と言うのではないか。結果と同じくその結果を出すプロセスを集積していただきたいと私は思う。
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