『 人脈の法則 』
人材コンサルタントとは、ある種“人脈”で仕事をする職業である。企業のトップや人事担当者、社内の同僚コンサルタント、そして転職者のみなさん。これらの人脈が深く、幅広くなるほど、私はいい仕事のできる環境を持っていると言えるわけだ。そんな仕事上の特性もあって、転職者のみなさんから「良い人脈を形成するには何をすればいいか」というご質問を時々頂く。
転職やキャリアアップに人脈は欠かせないものだ。しかし人脈を“作ろう”とする人は、思わぬ落とし穴に気をつけてほしい。いきあたりばったりに人と会いまくるだけなんてことは、もちろんみなさん避けているだろう。しかし、将来のプランに即した人脈を作ろうとする周到な人が陥りがちなパターンもある。“人脈”ばかり意識して、かえって人を遠ざけてしまうのだ。
他人をあなどるなかれ。たとえ相手とギブアンドテイクの関係を築けると自負していても、下心ありの恩着せや接近は、たいてい相応の悪印象を伴って見抜かれてしまうものだ。また、あからさまに選んで近づくと、そういう人間なのだと軽く見られがちだ。では、どうやって自分に必要な人脈を形成すればよいのか。私の身内の例になるのだが、ご紹介してみることにする。
今年社会人2年目を迎えた私の甥J君は、就職活動の際、土壇場まで就職先が決まらず周囲をやきもきさせた。いったんは食品メーカーに決まっていたのだが、内定を辞退したのだ。在学中からインターネットに慣れ親しんでいたJ君は、文系ながらIT系のエンジニアになりたいというのが本心だった。周囲も、そしてJ君本人も「今からでは無理だ」と半分諦めていたのだが…。
思いがけない所からJ君の求める就職先が現れた。それはJ君が2回ほどしか会ったことのない人からの紹介だった。J君のネット仲間である。ネットでの付き合いは深いが、お互いの肉声は殆ど知らない。なのに、取引先にJ君を強く推薦すると申し出てくれたのだ。責任の重い申し出だ。今後の取引でJ君と仕事をする可能性もある。ではそれを承知の上で、なぜ。「J君のような信頼も期待もできる人物と、ぜひ仕事上でも付き合いたいのです」と、その人はJ君のネットでの印象にも触れた上で、彼の両親に語ったそうだ。
J君は今、生き生きと働いている。J君の出来事で私は改めて感じたのだった。人脈の基礎となるものは、私たちが出会うべくして出会う人々の中にすでに存在する。面接という刹那の場面でも「先日泣く泣く不採用にした人を、ぜひ他部署の採用に紹介したい」という申し出が入ることがある。何が人を動かすのか。何が人脈を形成するのか。それは“人脈を作る意志”ではなく、私たちが生来持つはずの意志、つまり心である。たとえ能力や情報の提供に長けた人物でも、この意志がなければ、本当の人脈は築けないと思うのだ。
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