『 未経験の仕事の法則 』

未経験の仕事にどうしても挑戦したい。そんな熱意に燃える転職者のみなさんと、私は数限りなくお会いしてきた。新しいことを始めようとする人々は一様にやる気に満ちているものだ。私が出会った未経験転職志望者も、なげやりな人や後ろ向きな人は一人もいなかった。ただ、今は未経験者の採用枠が企業側に殆どないというのが実情である。先々は更に少なくなるだろう。

では私たち社会人は、新しいことに何ら挑戦することができないのだろうか。私は、決してそうは思わない。先日出会った転職者Fさんを例に説明していこう。彼は29歳の元人事マンで、ある中堅企業D社の企業広報職に未経験から挑戦したいと希望していた。企業側が出していた採用条件は“プレスリリースの人脈がある人物”“製品知識がある人物”等々だったのだが…。

Fさんには業界知識はあったが製品知識はなく、ましてや人脈など望むべくもない。しかもFさんの他に数人の志望者が競合しており、彼らは企業側が出した条件に部分部分で適合していた。状況は圧倒的にFさんに不利だった。なんとか面接にはこぎつけたものの、どうも話が弾まない。“やはりダメだったか”と私もFさんも思った。ところが、思わぬ所から道が開けたのだ。

Fさんが何の気なく話した趣味に、D社側が強い興味を示したのである。Fさんはネットにはまっており、独学で勉強しサイトを運営していた。それがかなりの集客を果たしたことから人事業務にもネットを駆使し、成果を上げていた。「ゆくゆくはそんな方が欲しかったんです。企業広報にネットを採り入れなければ立ち遅れるという焦りが当社にはある。あなたにぜひやってもらいたい」。未経験者のFさんが、他の経験者に勝利してしまったのだ。

Fさんの場合はたまたま見つかったという例だが、未経験者の個人的な努力による成果が企業のニーズと適合し、採用に至るケースはままある。ただここで大切なのは、単に勉強している、努力しているのではなく、Fさんのように成果を形で出しているかということだ。誰でも努力はできるし、やる気も出せる。そこから一歩抜きんでるにはどうするかを考えねばならない。

特にネットビジネスの世界などでは、入ってくる者の多くが“未経験”であることから、プライベートな部分で上げていた成果が非常に重要視される。実際に採用される未経験者を見ていつも思うのは、彼らは入社前からすでにプロである、ということだ。本当にその仕事をやりたいのであれば、会社で教えられるのを待つ必要さえないのだ。ただ始めればいいのである