『“責められる面接”の法則 』
慣れた面接官は、あの手この手で転職者を試そうとするものだ。まず、よく使われる手が“故意の追求”。転職者が答えに詰まるようなことを、わざと厳しい口調で問いただすのだ。相手が焦り、冷静さを失った所で本音を引き出そうという、転職者側からすれば少々困った手法である。しかし、困らせてまで吟味したい人材だからこそ、その手法がとられるという側面もある。
最近では私の知り合いのS君が、この“故意の追求”に相当絞られていた。S君は28歳の元大手商社マンである。ビジネス系のそこそこの資格を取り、仕事も精力的にこなしていたS君が「官庁系のボランティア団体に転職したい」と言いだした時には、我々周囲も耳を疑った。「結局、楽をしたいということじゃないのか」と。そう思ったのは採用側の団体も同じだったようだ。
「いろいろと立派な応募動機を並べてくださってますが、本音では楽をしたいというだけなのではないですか」。人事担当者が出てきた初回の面接で、早くもそんな厳しい質問が飛んできたのだという。そして担当者は続けて忠告を始める。「世間ではどうも、私たちのやっている仕事は楽だというイメージがあるようです。だがウチは違う。楽したいのなら今すぐお帰りください」
付け加えておくが、S君は決して生半可な気持ちで応募したのではなかった。ボランティア団体で働くことは、彼にとって学生時代からの夢だったのである。しかし、日頃から抱いていた思いをいくら語っても、面接官はそれを疑うような質問ばかり投げてくる。面接を終えたS君は「ああ、落ちたな」と落胆したそうだ。しかし、その数日後。一次面接通過の通知が届いたのだ。
二次面接、三次面接もそんな調子だった。面接官の誰もが「本音では楽をしたいのだろう」と言い、S君はそれを否定すべく仕事への覚悟を語り、またその内容に容赦ない質問が飛んでくる。面接のたびに「落ちた」と思ったそうだ。なのに毎回、通過通知が届くのである。S君は1カ月間、狐につままれたような気持ちで面接会場へ出向き続けたのだという。そして団体代表による、ことさら厳しい最終面接の後、とうとう合格通知を受け取ったのだ。
恐らくこのボランティア団体は、楽だと誤解して応募してくる人々の中から、本当に気骨のある人材を見つけ出そうとしていたのだろう。もし、みなさんが面接で“いじめられた”なら、決してそこで委縮してはいけない。自分の考えを堂々と語ればよいのだ。責められる時はチャンスなのである。むしろ、責める価値もないと判断されることを、私たちは恐れるべきなのだ。
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