『“転職のための転職”の法則 』
人材紹介オフィスに来る人の中には「この会社に転職したい」と、希望の企業名をはっきり口にする人も多い。スキルの問題で採用試験さえ受けられない人、惜しいところで不採用になる人、とんとん拍子に内定を得る人など、結果はいろいろだ。しかし、興味深いのはその人々の中で、転職への考え方が二手に分かれることだ。“受けた時点でだめなら諦める”人と“不合格でも、最終的に希望を叶えるためにはどうすればいいのかを考える”人である。
例えば、25歳のエンジニアDさん。彼は汎用系の開発を担当してきたのだが、オープン系の仕事をしたいとずっと考えていた。しかし西暦2000年問題対応で、現職が多忙すぎる。新しいことを学べないし、独学する時間もとれない。ゆくゆくは業界トップクラス企業のA社でオープン系の開発に携わりたいと考えていた彼は、業を煮やして私たちのオフィスへやってきた。
Dさんを面接したA社から返ってきた返事は、不合格。「素地は認めるが、オープン系の実務経験がないこと、語学力不足である点が厳しい」とのことだった。不採用理由を伝える私に、Dさんはなるほどと頷いた。「自分に足りないものが明確化しただけでも収穫です」。そして彼は私にこんな提案をしてきたのだった。「一段階、別の企業に転職しようと思うのですが」。汎用系もオープン系も扱う企業で経験を積み、A社の合格ラインに足りないスキルを補いたいと言うのだ。最終目的地の転職先を目指すための転職である。
いかがだろうか。志望先に本当に入社したいのであれば、Dさんがとったような方法もあるのだ。私は常々不思議に思うのだが「この企業にどうしても入りたい」と熱く語っていたのに、不合格になるとあっさり希望を変えてしまう人が少なくない。どうして、簡単に諦めてしまうことができるのか。確かに体裁やイメージだけで志望するのなら、特定の企業に執着した所で何も産みはしない。だが、その企業の環境があるからこそできる仕事に執着するのなら、志望に添ったスキルを目指す行程は、立派なキャリアプランとなる。
Dさんは今、転職先企業で経験を積みながら、語学を特訓中である。Dさんのやり方を真似ろと言うわけではない。しかし、もし本当に手に入れたいものがあるのなら、目的にふさわしい人間になる努力はしてもいいはずなのだ。
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