『 マナーの法則 』

心に余裕がなくなると、何もかも上手くまわらなくなるのはなぜだろうか。私も、たまに超がつくほどの多忙に陥ることがある。そんな時に限って、「いい人材だな」と感じた転職者からの連絡がなくなるのだ。きっとこちらの心の余裕のなさを見透かされているのだろう。10できるはずのことを5しかできなければ、それは必ず初対面の相手にも伝わるものだ。

初対面と言えば、それは転職者のみなさんにとっては企業への初回の電話連絡や、履歴書送付になるだろう。たくさんの転職者と接していて思うが、この初対面で損をしている人がどれだけ多いことか。企業は面接と書類の内容だけを見ているのではない。数少ない接触回数の中で応募者の人間性を推し量らねばならないのだから、それこそすべての接触場面を真剣に見ている。

極端な例で言うと、ノートの切れ端に経歴書を書いている人。応募動機の欄だけ書き直してあとはコピーという履歴書を送る人。そして意外と多く見受けられるのが、履歴書送付の際に送り状を同封しない人。送り状が同封されていなければ、どの募集に対して、どの職種を希望し履歴書を送ったのかが相手方にはっきり伝わらない。受け取った方は履歴書の扱いに困るわけだ。

電話での印象も、全ての企業が事細かにチェックするわけではないが、一応見られている。採用部門には関係ないからと、電話交換スタッフにぞんざいな口調で話していると…。面接官がスタッフに応募者の印象をヒアリングする際、裏表のある人格が明るみに出たりする。また、面接前の待ち時間も要注意だ。お茶を運んでくるスタッフも、採用活動の立派な一員なのだから。

かといって、すべての転職マナーを守ろうと緊張する必要もない。要は転職先で出会った人々に、マナーに気を遣う気持ちが伝わればいいのだ。緊張のあまりやった失敗なら、必ず相手もその気持ちを汲んでくれる。就職のノウハウ本を1冊買えば“常識的”と言われる範囲のマナー知識は事足りる。あとは様々な場面で相手を気遣える心の余裕を持つだけだ。また転職の機会に普段気にしないマナー知識をつけておくと、後々必ずプラスになるはずだ。

「この人には気遣いというものがない」と憤慨した方は、その人を避ければそれで済む。しかし、避けられた本人は手痛い損をしてしまうことになる。いくら能力があり優秀であっても、避けられてしまえば、それを認められる機会さえ失われるからだ。マナーとはつまり、自分の能力や素養を、心で相手に裏付けるものである。能力と心の余裕がひとつになって初めて、人は人からの評価を受けることができるのだ。