『 面接とお見合いの法則 』
中途採用の面接試験は、お見合いに似ている。気に入られることばかりに必死になって、相手をちゃんと見ていなければ、結婚した後に後悔する。
私は、お見合いで言う“やり手ババア”として面接試験に立ち会うことが多い。そこでいつも思うのだが、みんな“企業側に気に入られること”しか考えていないようだ。もっと相手のアラを見つけるぐらいの気持ちで望めばいいのにと思う。少々極端な例だが、今からご紹介するOさんのように…。
Oさんは40歳のメーカー出身者。製品の品質を維持する品質管理部門の長を、長年勤めていた人だった。その豊富な経験から、獲得を希望する企業はすぐに現れた。かねてから品質管理の経験者を欲しがっていたE社である。少なくともその時は、申し分ない組み合わせに見えた。E社は経歴書を見ただけで、ほぼ採用を決めている。提示された待遇に、Oさんも満足げだ。私はさっそく面接をセッティングし、Oさんと共にその会社へおもむいた。
最初はなごやかなムードだったのだ。Oさんが流暢に語る豊富な経験の内容を、役員たちは身を乗り出して聞いていた。しかし、役員の1人が「なにか質問はありませんか」と言った所から、雲行きが変わってきた。
「さきほど工場内を見せて頂いたのですが、品質管理のシステムに穴が多いように見受けられました」。Oさんがとんでもないことを言いだしたのだ。「それに、スタッフの勤務態度も少々気になりました。率直にお聞きしておきたいのですが、私が部門長になれば、スタッフの採用や教育からすべてを変更することになると思います。それでも結構ですか」。
役員たちの目付きが一気に険悪になった。痛いところを突かれたのだ。「そんな風に言うけどキミ、さっきチラッと見ただけじゃないか」「そうだそうだ。入社してもないのにわかるのか。第一キミ、業界が違うじゃないか」「そこまで言うんなら、品質管理とはなにか今ここで教えてほしいもんだ」
こんなふうに出てくる役員も役員だが、Oさんも負けてはいなかった。「わかりました。品質管理とは…」。彼の足をこっそり蹴って止めさせようとしたのだが、もう遅かった。Oさんはその後30分間、品質管理とは何ぞや、という自分のポリシーを、居並ぶ役員たちの前で演説したのだ。
「Oさん、あれはやりすぎです」。怒りながらE社を出た私だが、Oさんはサバサバした表情だった。「いいんですよ。また他を探します。私はね、率直にものが言える、柔軟性のある会社でないとやってけないタイプなんです。あなたも見たでしょ、あの役員たちの硬い反応。私には合いませんよ」。
そしてOさんは笑って付け加えた。「こういうことはね、事前に知っといたほうがいい」。完全に一本取られた気がした。確かに彼の言う通りなのであった。面接とは、見られる場であると同時に、相手を見る場でもあるのだ。
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