『 企業を映し出す鏡の法則 』
人事担当者の印象を就職先選びの参考にするというのは、学生達がよく使う手段である。「会った人の印象で会社を決めるなんて」と馬鹿にする向きもあるが、私はこの手段、意外に侮れないと思っている。様々な情報の吟味は勿論大切だが、参考程度に人事を観察してみるのも良いのではなかろうか。
例えば、こんな話がある。私の知り合いの人事担当者にGさんという人がいた。彼はある営業会社に勤めていたのだが、そこは採用ノルマのきついことで有名な会社だった。一定レベルの人材を一期につき何十人と採用せねばならない。ノルマは絶対であり、未達の場合には即Gさんの評価にひびいた。
その頃のGさんの印象と言えば、常に厳しく沈んだ顔つきのビジネスライクな人という感じだった。ノルマのプレッシャーに押されてか、これという応募者がいればすぐに入社へと説き伏せにかかってしまう。すると応募者もよく見ているもので、不自然な空気を察知して、かえって辞退する人が増える。
悪循環な状況に耐えかねて、Gさんは転職した。機械系のメーカーである。しばらくして「心機一転、新しい会社でまた取引したい」という連絡が入り、私はGさんと再会した。そして驚いた。Gさんは以前とは全くの別人に変身していたのだ。あの暗く重苦しい表情が嘘のように明るくなっていたのだ。
融通のきかない印象も消え、冗談まで飛び出す。聞けば、新しい会社は「いい人がいれば採用する」という方針で、採用目標はあるが絶対ではない。あせらず地道な採用をしようと思うようになると、かえって上手くいくようになったのだという。「前の会社は本当に縛りがきつかった。そんな雰囲気が、私を通じて応募者の方に伝わっていたのかも知れません」とGさんは言った。
人事も私たちと同じ会社員である。働き方や働く環境ひとつで、顔つきまで変わってしまうものなのだ。採用過程を通じて一番接触する回数の多い人事を観察してみると、その会社が見えてくる。だが、また逆に私たち自身も同じように観察されていることを忘れてはならない。他者から見た自分は、自分の置かれている状況を映し出す鏡。そう肝に銘じて働きたいと、私は思う。
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