『 独立心と企業の法則 』

会社員からの“独立・起業”が広く認知され始めているからだろうか。最近私が出会う転職者の方の中にも、「将来の独立を視野に入れた転職がしたい」と宣言する人が増えてきた。独立を目指すことそれ自体は素晴らしいと思う。しかし、企業への転職時にあえて口にするなら、伝え方に注意が必要だ。

例えば以前、こんな人がいた。店舗企画会社の元営業職、Eさんである。Eさんは将来的に自分の服飾店を持ちたいと考えており、経営や実務を学ぶために服飾販売企業A社への転職を希望していた。営業職で培ってきたビジネス感覚を買われ、Eさんは採用第一候補として面接に臨んだのだが…。

なんとEさんは、一次面接で落ちてしまったのだ。一体どんなやりとりがあったのかと私はEさんに聞いてみた。すると、独立のためにぜひここで勉強したいと熱く語ったところから、A社側と話が噛み合わなくなったのだと言う。Eさんは首を捻っていた。なぜ意欲をアピールして不採用になるのだ?と。

勉強したいという言葉は、A社から見ると意欲とは受け取れないのだと私はEさんに説明した。確かにA社は社員の独立に理解があり、独立後ビジネスパートナーとして相互協力できるシステムも確立している。だが、そのA社とて、ただ独立させるためだけにわざわざ社員を募集しているわけでなはい。

社員として働く間に、どんな貢献をしてくれるのか。A社にとってはそこが一番肝心な点だった。営業職経験のあるEさんには、数年後を目処にエリアマネージャーとして活躍して欲しいとA社は期待していた。Eさんは自分の勉強にばかり目が行き、A社が望む“勉強の対価”見落としていたのだ。

独立に理解ある会社も、そうでない会社も、根本で求めるものは同じだ。あなたと企業、双方がそれぞれ欲するものを得るために、お互い何ができるでしょうか?と問うているのである。働かされるだけの会社に魅力がないように、働くだけの人にも企業は魅力を感じない。お互いに貢献し合ったと感じた時にこそ、本当に独り立ちできる何かが身についているのではと私は思う。