『 考え方のギャップの法則 』

会社と従業員の言い分がよく食い違うように、人事と転職者の物の考え方にも、しばしば隔たりが見られる。どちらか一方が正しいとも言えないし、どちらか一方が間違いだとも言えない。あくまで中立的に両者の話を聞く立場の私が言えるのは“互いの考え方をまず知り、そして対処せよ”ということだけである。

相手の考え方を知らねば、企業側は採用が上手くいかない。転職者側は転職が上手くいかない。今回は、転職者側がつまずいた例をひとつ紹介してみよう。Uさんという薬品メーカー出身の研究員だ。彼は第一志望A社の選考に落ちてしまったのだが、その理由が全く理解できないと怒り出したのだ。

Uさんには、退職してから転職活動を始めるまでに2年の無職期間があった。A社はそこをネックとして他の転職者を採用したのである。「A社が求めるスキルは満たしていたのに、そんな理由で落とすなんて偏見以外の何物でもない」というのが、Uさんの言い分である。しかしA社にも言い分があった。

A社人事担当の言はこうだ。「採用した人、Uさんと同じような経歴で現役だったんですよ。どうせなら最新の現場知識とかある人の方が、いいかなあと思って…」。私は迷いながらも、その言葉をUさんに伝えたのだった。

そしてこう付け加えた。「私たちも同じような会社が2つあれば、細かいところで選びますよね」と。だから細かいマイナス材料にされないよう、2年間のブランクについての説明を練り直す必要がある。相手の考え方はわかったのだから、怒るよりも次の企業面接に向けて対策する方が遥かに生産的だ。

企業と働く人々の考え方の距離は、時代の流れと共に縮まりつつはある。しかし、両者が完全に歩み寄ることは今後も難しいだろう。だからこそお互いを更に知るべきだと、私は思うのだ。立場の違う両者が、その違いを越えて良い関係を結ぶために。尚、Uさんは今2社目の面接を順調に受けている。