『 給与と市場価値の法則 』
みなさんは自分の年収額を割り出す時、諸手当も含めて計算していないだろうか。一度試しに、残業手当と休日出勤手当を差し引いて年収額を見てみよう。かく言う私も、その昔興味半分で計算して驚いた。9~6時の私への評価を突き付けられた気がした。
なぜこのような話から入るのかと言うと、先日、Sさんというエンジニアの方が転職活動に苦戦する場面に立ち合ったからだ。Sさんは販社系列のソフトハウス出身で、前職での年収は600万弱だった。この600万のうち、何と260万もが時間外手当なのだ。聞けば、相当ハードな仕事ぶり。土日出勤や深夜残業は当たり前。半月近く家に帰れなかったこともあるらしい。
最初に面談室で向かい合った時、Sさんは自信に満ちあふれていた。同業他社の知り合いと情報交換する中で、Sさんは自分が業界内でも高水準に位置する年収取りであることを自覚していた。「だてにハードな仕事はこなしていません。それなりのことをやってきたと思っています」とSさんは自己PRし、転職先での年収は700万円と希望してきたのだった。
「恐らく無理です」「何故ですか?応募してみないとわからないじゃないですか」というやりとりの後に、とりあえず各企業に応募書類を送って様子を見ることとなった。送った企業はトータルで16社。結果はことごとく書類選考の段階で不採用である。その中にはSさん自身がかねてから狙いをつけていた企業もあっただけに、彼は相当なショックを受けたようだった。
なぜ面接にも漕ぎ着けず落ちたのかが知りたい。その一心でSさんは、目当てだったA社に電話してみたそうだ。返ってきた答えは、やんわりとだが、Sさんのスキルを低く評価するものだったという。「前職年収さえ保証できないので、他を当たられた方がいいと言われました。私は実際のところ、どのぐらいの評価なんでしょうね…」。確かに年収は前職より下がる。収入面では痛いが、それ自体を恥じることはないと私はSさんに言ったのだった。
働いた時間より出した成果、仕事の量より内容を重視する企業が増えている。Sさんに対する“前職年収に満たない”との市場価値判断は、至極妥当なものだ。膨れ上がった年収から時間外手当を引いてみると、Sさんの本当の市場価値が見えてくる。あとはその事実を受け止め、これから真のスキルアップをしていけばいい…。そんな話をした後、Sさんは気を取り直して転職活動を再開した。来週にも、ある外資系大手から内定が出そうである。
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