『 採用活動と企業の法則 』
採用選考は転職者にとっても、また企業にとっても真剣勝負の場である。例えば入社し終えてから失敗に気付いた場合。転職者側の損失についてはみなさんご想像がつくだろうが、企業側の損失にも測り知れないものがある。採用活動経費や人件費などの直接経費はもちろんだが、更に怖いのは現場のモチベーション低下だ。ひとつの採用失敗が、組織の危機を招くこともある。
例えば多大な業務でパンク寸前のあなたの部署に“即戦力”というふれこみで、実は仕事の全くできない中途採用者が入社しきたらどうだろう。人員の増強で現状が改善されるという期待は見事に裏切られ、あなたは中途採用者の尻拭いに奔走する。そしてこう思うはずだ。「仕事のできない彼も悪いが、一番悪いのは彼を採用した人事だ!経営陣だ!」と。
このような状況に陥ることを最も恐れる立場からこそ、企業は厳しいハードルを設けて採用の精度を高めようとする。そして中には工夫の末に生まれた独自の方法で人材を選別する企業もある。先日、社員600名の大手系列企業でちょっと面白い話が聞けたのでご紹介しておこう。その企業では、「初回のセールス電話は全て社長に取り次ぐ」との決まりがあるそうだ。通常の採用選考と並行して、セールスへの応対を採用手段として使っているのだ。
応対に出た社長が、その“仕事ぶり”を見る。社長はもともと営業畑出身ということもあり、自社にマッチした営業社員像をよく知っている。そして“これは”と思った人にスカウトをかける。スカウトされる側もその会社のことを調べた上でセールスに来ているため、話が早いそうだ。なにより実際のセールス現場を見て判断できるため、入社後の成功率が非常に高いという。
なぜそんな採用活動を始めたのかというと、以前、経歴書の内容だけで採用を判断し、失敗した反省を踏まえてのことだという。優秀な営業成績をおさめていた人を採用したのだが、結局その人は職場に馴染むことができなかった。営業活動の進め方が合わなかったのである。一時は営業部の社員の殆どがその人と対立し、職場は大混乱。部署全体の営業成績にも影響したらしい。
直接話す機会があった時、社長は私にこう語ってくれた。「“優秀な実績を持つ人”が良い人材とは限らないと、その時気付いたんですよ」と。「“お互いに仕事のスジが合う人”と出会うことが重要なんです。それは、経歴書や履歴書だけを見ていてはわからない」。なるほど、と私は思った。そして、転職者が自分の本当の姿を見てもらおうと努力するように、企業も転職者の本当の姿を見極めようと様々に苦心しているのだな、と思ったのだった。
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