『 転職マーケティングの法則 』

企業の採用活動にはマーケティングの意識が欠かせない。転職マーケットの中でどのような層の人材が欲しいのか。またその人材層は何を動機とすれば自社を志望するか考えた上で、適切なアピールをしていく必要がある。そのためにはマーケットの中で自社がどう見られているのか自覚する必要もある。

これは企業のみならず、私たち職業人にも言えることだ。自社を省みず、ただ欲しい人材像ばかりを並べ立てる企業には、みなさんも首をかしげる事があるのではないだろうか。同じように、私たちも目標や戦略なくただ自分のしたいことを並べ立てるだけでは、懐疑的に見られても仕方がないのである。

しかし逆にマーケットを踏まえてアピールするという視点を持てば、弱みを克服し強みに転じることもできる。たとえば今回はそんな視点からある企業の採用活動を紹介してみよう。話を聞いたのはベンチャー企業A社の人事担当Tさんだ。A社は業界3位だが1位には大きく水をあけられ、2位企業と僅差で競り合っていた。

1位には企業規模の点では追い付けないが、サービスの優位性で業績的には充分勝負の可能性がある業界。そのためにもTさんらは即戦力となる技術者を増強したかった。だが業務の特性上、ターゲットとなる人材像はどうしても1位、2位企業と競合する。通り一遍のアピールをするだけでは1位企業に欲する人材の大部分を取られ他を2位企業と争う形になると思えたという。

そこでA社は、あえて1位企業を志望する層をターゲットにした。中でも大手志向ではなく、サービスの優位性や仕事の質を主眼にしている層に絞る。そして彼らにA社の開発現場を重点的にアピールした。人材の層が薄い分、サービスの企画段階から若手開発者がイニシアチブを取っていること。それが却ってユーザーに近い視点のサービスに繋がり好評であること…。

担当範囲が広い分、負担は大きいが、やりがいも大きい。このようにTさんらは、弱みを強みに転じるアピールを行なったのだ。A社には現在、1位企業と比べても非常に良い技術者達が少しずつ集まりだしている。市場の中での自分たちの位置を認識し、どう動くべきか冷静に考える。決して難しい事ではない。こうした視点をぜひキャリア構築にも取り入れていただきたい。