『 覚悟の法則 』
「こんな会社に入るんじゃなかった!」と、入社早々に後悔してしまう。残念ながらそんなケースも、転職にたびたび見られる場面である。後悔したらどうするか。すぐに退職し再度転職を試みるのも、ひとつの方法だろう。しかし現実には“転職先を短期間で辞めた転職者”に対する企業からの風当たりは想像以上に冷たい。よほどの理由がなければ面接まで進めないはずだ。
なぜ短期間で辞めた転職者が不利になってしまうのか。企業の立場で考えてみよう。企業は、キャリアやスキルのある人材と同等に、任せた仕事を完遂してくれる人材が欲しいのだ。仕事があるから、人材が要る。なのにその人材が初期段階で抜けてしまう可能性があっては、仕事の計画自体が描けなくなる。いくら転職者が「今度こそは」と意気込む優秀な人材でも、目の前に“短期間で辞めた実績”がある以上、企業は不安にならざるを得ない。
転職者が、企業の良い部分も悪い部分も真剣に検討して入社を決めるように、多くの企業も転職者を様々な角度から真剣に見ているのだ。では、検討を重ねた上で転職し、それでも入社を後悔してしまったらどうすればいいのだろうか。ひとつの例として、今年の春に我々のオフィスを訪ねてきた営業マンのEさんを挙げよう。Eさんは前回に転職した会社を約1年で退職していた。
詳しく話を聞くと、その会社はEさんにかなりひどい仕打ちをしていた。Eさんが望んで受けた職務が、なんとEさんの入社数週間後に消滅。真剣な検討以前に、企業の計画そのものがなっていなかったのである。Eさんの憤まんは容易に想像がつくし、私だって彼と同じような立場になれば怒りに任せて退職したかもしれない。しかし、Eさんは辞めずに踏みとどまった。
「転んでもタダで起きないと思ったんです。ここで辞めたら自分の丸損だと」だから、Eさんは社内的にも強引に配属された部署で、やりたくもない仕事をこなした。そしてさらに驚くべきことに、トップの業績を打ち立てたのだ。「業績さえ得れば、次に繋がるはずだと思いまして」。Eさんの言葉通りだった。面接に行く先々でEさんは1度目の転職時よりも高く評価され、やりたかった仕事を今度はここで手掛けてくれという内定企業が集まったのだ。
覚悟の度合いが違う、と感服した。いくら真剣に検討しても、会社と人材の出会いは結局、フタを開けないとわからない。それに本意でない仕事や会社は、確かに自分を自己実現から一時遠ざける。だが、本意でないものに当たった時も、そこから何かを吸収する覚悟があるか。失敗のまま終らせず、成功に変える、結び付ける覚悟があるか。本当にやりたいことをつかみ取る人は、そんな覚悟を持っているのだと、私はEさんに思い知らされたのだった。
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