『 自助能力の法則 』
私は転職者の方と面談する時、必ずある種類の質問を投げ掛けるようにしている。その人に“自助能力”があるかどうかを判断するための質問だ。例えば転職者の方が「こんな仕事を希望している」と言えば、「ではそのためにご自身では今何をされていますか」と聞いてみる。自助能力のある人ならば、すぐに具体的な書籍名等をいくつも挙げて、自分の勉強内容を述べてくれる。
自助能力とは、文字どおり“自らを助ける”能力のことだ。周囲に依存せず、自らのできる範囲内で自ら努力できるか。本番の企業面接でも、この点は必ずと言っていいほどチェックされる。では、具体的にどのような人が“自助能力に富んだ人”と言われるのだろう。最近出会った転職者の方の中にSさんという際立った人がいたので、彼の話を例に説明していきたい。
Sさんは中堅周辺機器メーカー出身の営業マンだった。どちらかというと製品企画寄りの仕事をしており、常時20種類以上の製品を担当するという多忙さ。だがハードワークの間を縫って、Sさんは英会話スクールに通っていた。その会社では英語を使うことはなかったが、今後のキャリアプランを考えた際、自分の弱点となるのは英会話能力だとSさんは自覚したからである。
転職を決意して我々のオフィスへやってきたSさんは、こう希望を述べた。「学ぶことは自分でできます。だが実戦の場だけは環境に頼らざるを得ない」だから今までの経験を活かせ、なおかつ海外取引を扱える職場へ転職したいと。その言葉に私は驚いた。普通なら「英語研修のある会社」という希望に留まりがちなのだ。私だって転職するとなれば、会社の研修に頼る部分があるかもしれない。しかしSさんは勉強は自分でできると言い切った。
Sさんは、同じく周辺機器を扱う外資系商社へ転職していった。彼が実際に勉強を自己完結できるかどうかはわからない。だがSさんには2つの大きなポイントがある。ひとつはキャリアプランを充分に考えた上で、必要な仕事、必要な課題を自ら選択している点。もうひとつは、本当にやりたいなら、人は与えられるのを待つまでもなく行動する、ということを体現している点だ。
そしてSさんには、さらに大きなポイントがある。主体が周囲ではなく、Sさん自身にあるということだ。会社の研修は、どんなに内容が充実していようとも、結局は会社のための勉強である。それだけで満足するなら、主体を会社へ明け渡しているも同然ではないか。私たちは会社のビジョンの前に、自らのビジョンを持たねばならない。それが、自分が主体となって動くこと、つまり自助能力を備えて自らのキャリアを切り開いていく第一歩なのだ。
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