『 業界研究の法則 』

誰でも一度は、伸びていてイメージも良い業界に入りたいと思うものだろう。しかし“花形業界”に入ったからと言って上手くいくわけでもないのが、転職の世界である。ビジネスマンが本当にやるべきことは、業界に入ることではなく、仕事だ。その業界で何がやりたいのかを、結局は問われるのだが…

何がやりたいのかわからないまま業界選択をしている人に、時々出くわすことがある。最近では大手都市銀行出身のTさんだ。彼が志望先として挙げたのは、IT業界、コンサルティングファーム、流通系ベンチャー。脈絡のない顔触れに、その志望動機を一つ一つ聞いてみると、答えは全部一緒だった。

「伸びている先進的な業界だから」というのが、全てに共通するTさんの志望動機なのである。だが、企業の目から見ればそれは志望動機ではなく、単なる“感想”に過ぎない。自分なりに業界研究をかなりやったと言うTさんに、私はその研究姿勢に問題があるのではと言ってみたのだった。

問題は、Tさんが受け身であるということである。Tさんが業界研究で得たのは“感想”だけで、自分はこうしたいという“ビジョン”がなかったのだ。それは、自分でなく、まず業界ありきで研究しているせいだ。良い業界に入りさえすれば自分も良くなるという、受け身の気持ちがどこかにあるためだ。

そもそも受け身では、ビジネスマンは仕事などできない。環境によって良くしてもらおうという考えで、もし入社したとして幸せだろうか。世間や他人から流れてくる風評でなく、自分の目で何を確かめるべきなのか。それがわからないまま入社しても、またイメージとのギャップに苦しむだけである。

業界研究は確かに大切だ。しかし、それは“話題の勝ち組み企業”を探す研究ではなく、自分のやりたいことがある業界を探すための研究であるはずだ。自分のやりたいことは一体どこにあるのか。そんな目で眺めてみれば、Tさんもまた違った業界地図が見えてくるはずである。