『 情報武装の法則 』
人材紹介会社を訪れる転職者の方の中には、目当ての企業を絞り込んでから登録に来る人もかなり多い。こちらが驚くほど完璧に下調べしている人もまた多く、情報化の社会なのだなあと改めて認識させられることしばしばである。その気になれば誰でも、プロ顔負けの知識を得られる時代になった。だからこそ、情報に無頓着な人が悪目立ちしてしまうようにもなりつつある。
先日、これはちょっとあんまりではないかと思った人に出会ったので、ご紹介しておこう。WEBデザイナーのRさんである。Rさんはネットで目当ての企業A社の募集を知り、どうせ応募するなら紹介会社経由でと当オフィスへやって来た。そこまではいいのだが、面談室で向かい合っていざ話をしてみると、彼はA社の募集条件にさえ目を通していなかったのだった。
「A社のサイトを見て募集を知ったんでしょう?なら、募集条件が書かれてたはずですが、そこは見なかったのですか?」と私はRさんに問いかけた。すると、見たことは見たがよく覚えていないと言う。紹介会社に行けばちゃんと教えてくれるものだと思っていた、と。それはもっともだが、ならばなぜ募集条件も検討しないうちから応募する気になったのだという疑問が残る。
「WEBデザイナーを募集していて、良いって聞いたことがある会社だったからですよ」と、Rさんは投げやりに言うのだった。そして、逆にこう聞いてくるのだ。「A社って、どんな会社なんですか?」と。具体的に何が知りたいのかと聞いてみると、企業概要や業務内容なのだと言う。つまり良いという評判だけで、基本的な企業情報も調べずに応募を決めているのだ。
Aさんは経歴書や作品を見る限り、決して悪くはないデザイナーだった。しかし、転職者としては依頼心が強すぎるのではないかと私は思った。この姿勢が紹介会社だけに向いているうちはいい。だが人の姿勢というものは、えてして様々な場面で顔を覗かせてしまうものである。嫌な予感は的中した。基本的なことだけでも頭に入れておくようにと釘を刺したにも関らず、彼はA社の面接で「うちの会社をわかっていない」と看破されたのである。
「人が欲しいのなら、説明ぐらいすればいいのに」と吐き捨てて、Rさんは去っていった。確かにRさんの言うことも、ある部分では正しい。だが、これだけ膨大な情報が氾濫している中で、多くの人があらゆる手段を用いて自分に必要なものを集め、情報武装しているのだ。目の前にある情報さえ自分でつかもうとしない人から淘汰されていくのは当たり前の話だろう。「知りません、教えて下さい」の通用するハードルが、どんどん高くなっている。
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