『 評価と理念の法則 』
納得できない評価にも何かしら理由が隠されているものなのだと、前回私はお話しした。しかし、それでも自分が会社から受けている評価には納得ができない。隠された理由うんぬんと言う前に、会社の評価基準自体がポイントを外しているのだ…。と、得心のいかない方も当然いらっしゃると思う。
公正な評価制度の構築は、企業にとって永遠の難題である。最近では能力・実績評価に主軸を置いた制度がもてはやされているが、ご存知のとおり、上手く運用できている企業はそう多くはないというのが現状だろう。各部門によって異なる業務内容に即した、かつ全社的に見ても公平な評価基準を確立できているのか?評価基準を策定する者は、対象部門の業務内容を現場レベルまで下って理解しているのか?評価制度を用いる管理職者の教育は、果たして充分になされているのか…?残念ながら、問題は山積みである。
では、私たちはどのようにして“的外れな評価制度”しか持たない企業を見分ければよいのだろうか。Dさんの事例を通じて、ご説明していこう。Dさんは24時間体制で稼働する工場の、ライン管理責任者である。ある夜、折悪しく彼が当直を勤めている時に、製作機のひとつがちょっとした不調をきたした。ラインからは次々と歩留まり品(不良品)が吐き出されてくる。彼は即座に自己の判断でラインをストップし、3時間後に稼働を再開した…。翌朝、Dさんは“3時間のライン停止”について釈明を求められた。たった3時間でも、Dさんは会社に対して損害を与える判断を下したことになるのだ。そこで、Dさんは“会社の経営理念”を釈明理由に挙げた。「歩留り率を○%以下に抑えるという業務目標に添って判断しました。“お客様に本物の商品を”という我が社の理念に照らしても、正しい判断だったと考えます」。もしDさんの会社に明確な経営理念や、経営理念に添った部門ごとの業務方針がなければ、Dさんは“損害を与えた奴”という、マイナスの評価をされてしまったかもしれない。よく、会社を選ぶ際に“納得のいく評価制度がある所”という希望を述べる人がいるが、まずチェックすべきなのは、評価制度そのものの中身でない。明確な経営理念が存在し、それが現場の業務の中で機能し、評価基準もその理念に添って作られているか、ということなのだ。
だから私は“納得のいく評価制度”より、まず“納得のいく経営理念”を探すことをお勧めする。あなたのビジネスモラルに合致した経営理念が、現場レベルまで浸透した会社なら、さほど的外れな評価に悩むこともないだろう。もっとも、そんな会社に入れたとしても、あなた自身が何もしなければ、納得のいく評価など得られない。これは、言うまでもないことだと思うが。
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