『 ビジネスモラルの法則 』
上司との無用な軋轢を避けるためには、まず自らが属する組織の方針を理解することだ。と、前回私はお話しした。理解した上でなお上司や組織の方針に納得できないのであれば、それはあなたと会社が根本的に合っていないのだと。今回は、ここをもう少し突っ込んでお話ししてみたい。ビジネスモラルのミスマッチがどんな結果を招くのか。また、ミスマッチを避けるために、我々はどのような行動で対処すればよいのだろうか…。
人材紹介オフィスで転職者と接していると、リストラ解雇ではなく純粋に自主退職する壮年の役職者が、常に一定量存在することに驚かされる。目に付く退職理由が“会社との考え方の相違”だ。それまでほぼ問題もなく永年勤め続けてきた人が、ぷっつりと糸が切れるように会社を辞してしまう。経営陣に近い役職者ほど、その傾向が強いように思える。経営陣と接する頻度が高まることによって、また“真に会社側の視点”で物を考えることが要求されるようになって、会社と自分の決定的な相違点に気付いてしまうのだ。
例えば中堅メーカーの営業畑を歩んできたKさんは、営業部門長に就任して間もなく“製品のバグ情報を会社が隠蔽している”ことを知った。隠すのは顧客に対して不誠実だし、どうせばれることだ。公開したほうが良いとKさんは経営陣に進言したが、聞き入れてはもらえなかった。案の定バグは周知のところとなり、営業所には苦情の電話が殺到。しかし経営陣はまったく責任をとろうとしない。「以前から時々あったバグによる苦情は、もしかしてすべて予想されていたのでは…」。いちど芽生えてしまったKさんの不信感はそれから事あるごとに膨張し、とうとう辞表を提出するに至った…。「その会社の経営方針“顧客志向”だったんですよ。まったくお笑いですよ」
ひとくちに“顧客志向”と言えど、会社や個人によって定義や表し方は様々だろう。大切なのは、ビジネスマンとしてのモラルの上で“決して相容れない重要な部分”が自分と会社の間にないかどうか、早い段階で知っておくことだ。そのためにはまずKさんのように、自らのビジネスモラルを確立すること。そして、経営陣と近しい立場になるまでミスマッチに気付かなかったKさんの轍を踏まないことだ。“顧客志向”という理念があるのなら、それを経営陣はいかに企業の行動指針や戦略・戦術へと具体化しているのか。転職者のみなさんは、面接の席でぜひとも具体的な回答を引き出してほしい。その答えいかんによって、早々に見切りを付けるか、許容範囲内で合わせていけるのかを、みなさんは検討し、選択することができるのだから…。
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