『“格”と実力の法則 』
この会社はあの会社より格が上だとか、そんな言い方をするのはあまり好きではない。しかし、企業ランクという言葉が無意味になりつつある最近でも、“格”にこだわる企業はまだまだ多い。そのこだわりは、転職市場にもいまだ陰を落としている。つまり“格上”の会社の人材を採用したがる企業が目立つのだ。
経済社会のパラダイム自体が転換されようというご時世に、しかも実力主義と言いながら、そんなことを言っているのか。と思う方もいらっしゃるだろう。だが、企業にも企業なりの事情がある。自社より“格上”の会社から人材を引き抜ければ、やはり嬉しいのだ。“格上”の“優秀な人材”を採用した満足感と実績が、最もわかりやすい形で得られるのだろう。
しかし一方で、“格”うんぬんに全くこだわらない企業も、徐々に増えつつある。ある大手SI企業A社を例に説明してみよう。数年前A社を初めて訪れ採用実績一覧を見た私は、独特の傾向に興味を持った。出身企業を見ると、いわゆる“格上”も“格下”(嫌な言い方だが)も混合状態。“格下”のほうが多いぐらいだ。私はA社の人事に、何気なく理由を聞いてみたのだった。
人事担当が笑いながら返してきた答えはこうだった。「逆に聞きますが、何か理由がいるんでしょうか。いい人材を真剣に採用してきたら、こうした結果になったまでのことなんですよ」。私の中にも、いまだ“格”という概念がある。それを見透かされたような気がして、恥ずかしくなった。私は気を引き締め直して、A社の採用基準について詳しく聞いていったのだった。
技術的な経験などの職務経歴は、もちろん見る。しかしそれ以上にA社が重きを置くのは、どのように職務に取り組む人物なのか、という点だった。クライアントや同僚とのコミュニケーション方法は? 担当業務をどのようなフローでこなし、どのように完結させるのか? 面接に時間と手間を惜しまず、判断の難しい人物的な側面を、まさしく真剣に見極めていたのである。
このような会社こそ、文字通り気を引き締めて面接に臨むべきだと思う。従来の“格”、イコール“ブランド”は通用しない。企業名というラベルを引きはがされ、人としての資質を徹底的に吟味される。本当の実力主義とはこういうことだ。壁を越えてチャンスが広がる分、私たちは自分の“品質”に責任を持たねばならない。ちなみにA社の前年度業績は、目標を大幅に上回る見込み。フロアーにはいつ訪ねても気持ちいいほど活気がある。
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