『 変わらないものの法則 』

百余年も続いた老舗企業が、次々と倒産に追い込まれている。かと思えば、今をときめくIT系企業が株式市場を賑わしている。最新の技術や情報や製品が登場するたびに、それ以前のものが陳腐化する世の中だ。新しいものが良く、新しいものについて行かねばならない。最近のそんな風潮には、転職市場も無縁ではない。皆、各業界の最新スキルを身に付けたがっている。

しかしこのごろ私は思うのだが、先端のスキルや知識ばかりを追い続けるのは、あまり得策ではない気がするのだ。若いうちはまだいいかも知れない。だが人の吸収力なんていうものは、そうそう持続しないものだ。私たちの大多数は、いつか新しいものについていけなくなる。また先端企業を選んだとしても、より新しく優秀な競合が出てくれば、来年にも潰れるかも知れない。

では私たちは、早すぎる革新のスピードに、どう対処していけば良いのだろうか。先日出会った転職者のMさんに、そのヒントを見たのでご紹介してみたい。Mさんは、27歳のソフト開発系技術者である。特に技術革新の早いこの業界で、ちょうど年齢的にもターニングポイントを迎えていたMさんは、先端技術にこれから自分がどう対処していくべきかやはり悩んでいた。

そこでMさんが選んだのは、ミドルウェア開発業界だった。ミドルウェアとは、技術者自身が開発時に使うツールのことである。ITだなんだとエンドユーザーの目に留まる業界ばかりがもてはやされる中で、ミドルウェアの陰は薄い。しかし、目移りの激しい消費者でなく、技術者自身が使うものだけに、ミドルウェアの開発技術は陳腐化しにくいという利点がある。

しかもここが大切なのだが、ミドルウェアの開発行程では、断片的な技術でなく開発全体の手法、つまりひとつの製品を企画からプロデュースする手法が身に付くのだ。また、技術者自身が使うという製品の特質上、技術者をマネージメントするスキルや教育するスキルが身に付く。私はMさんの選択に深く頷かされた。まさしく私が必要と考えていた要素と同じだったのだ。

最新の技術や知識は、明日にでも古くなる。だが、技術や知識をまとめるプロデュース力や、そこに携わる人をまとめるマネージメント力は陳腐化しない。これからの転職に必要な要素は、まさにそれらだと思うのだ。時代はこれからも激しく変化する。しかし、その中でも変わらないもの、身に付けた人だけが活かし続けられるものがある。新しいものにこだわるのもいいが、まずはゆるぎない素地を作る。それが今後ますます大切になるだろう。