『 アメニティの法則 』
我々の業界では「あの人はアメニティが高い」というような言い方をよくする。人物的に印象が良いとか、話していて好感が持てるとか。言葉のさす意味は大体そんな所だ。毎日多くの転職者と会っていると、この“アメニティ”がとてつもなく高い人に、ごくまれに出くわす。顔を見合わせた瞬間から、その人の“ファン”になってしまうのだ。これも一種の才能なのだろう。
冗談混じりに言わせて頂くと、私自身もけっして“アメニティが高い”ほうではない。むしろ高く見せようとして毎日あがいている部類だ。だから、「そんな最初からないものを求められても」と言う人々の気持ちもわかる。しかし、それを承知で聞いて頂きたい話があるのだ。ほとんど人物的好感度だけで希望の転職先から内定を得てしまった、Fさんの話である。
25歳のFさんは、輸出入業務の見習い的な仕事をしていた。彼の勤めていた会社は昨年冬に倒産。せっかく覚えかけたのだから、今後も輸出入を専門的にやりたいというのがFさんの希望だった。だがいかんせん経験が浅すぎるために、どの企業も経歴書を見るだけで会おうとしない。そこで私は“飛び道具”を使った。企業見学と称してFさんを志望会社に連れていったのだ。
Fさんは、私が今まで出会った中で恐らく5本の指には入る“アメニティの高い人”だった。とくに容貌がいいわけではないのだが、立ち振る舞いのすべてから好印象を持たされてしまうのだ。予想通り、それは志望会社の人事の目にも留まった。数日後には「あんなキャラクターの人材がうちにも欲しかった。ぜひ面接できないか」と、今度は向こうからオファーが入った。
こうしてFさんは志望通り転職していった。本来なら彼の希望する輸出入業務に欠員はなかったのだが、会社はわざわざ人員計画を変えてまでFさんを迎え入れた。それだけFさんの“アメニティ”は強力だったのである。人物的な好感度の高さには、企業の都合さえねじ伏せるパワーがあるのだ。企業は人の集まりであり、人は誰しも好感の持てる人物と一緒に居たいのだから。
では、例えば私のような“最初から持たざる者”はどうすれば良いのか。代わりに業務スキルや経歴を高める。それも真っ当な方法だろう。だが、人に与える印象などスキルさえあれば関係ないと、最初から省みないのも違うと思うのだ。Fさん自身は自分の良さを殆ど意識していない人だったが、私たちは自分の良い部分を意識して伸ばすことで、彼に近づくことはできる。業務能力を高めるだけがスキルアップではない。己の人間性を知り、その中で強みを伸ばしていくことも、ビジネスマンとして必要なスキルアップなのだ。
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