『 やりたい仕事の法則 』

私は今まで、ここでたびたび“したこともない仕事にある日突然就くなんてよほどでない限り難しい”という話をしてきた。例えば営業から、ある日突然、商品企画とか。商品企画から、いきなりウェブデザイナーとか。まったくの未経験が許されるのは新卒の時ぐらいだし、社会人の未経験者が歓迎されたのは過去の話だ。と、そう話し続けてきたように思う。

では、一度社会人となってしまうと、異分野の仕事への道は完全に閉ざされてしまうのか。実は、そうだとは思わない。私が出会う転職者にも、先に出した例のようなキャリアチェンジをする人はいる。ただ、異分野に転職できる人というのは、自分の経験の中で何が目指す仕事に活かせるのかを冷静に見ている。そして“なぜその仕事をしたいのか”を自分の言葉で語る。

少し極端な人の話をしてみよう。36歳の自称エンジニア、Fさんである。経歴書を見て驚いたのだが、なんとこのFさんには職歴がなかった。幾つもの大学を渡り歩いていたのだ。工学部から始まり、理学部、建築学部、情報工学…。計18年間、世の中の流れに合わせて“旬”の仕事に関する勉強をし続けていた。“どこへ行っても応用の効くエンジニア”となるために。

私はFさんに、なぜてんでバラバラな勉強をしてきたのか聞いてみた。するとFさんは「時代時代の有望な業種について勉強してきたらこうなった」と言うのだった。有望な業種なんて当然、時代によって変化するものだ。“自分はこれがしたい”という確固たるものがないために、彼はすぐ取り換えの効く勉強という形でしか、社会に接することができなかったのだ。

結局幸運にもFさんはその知識量を買われ、大手精密機器メーカーの製品評価部に就職していった。しかしFさん自身はかなり不満そうではあった。自分ならもっと高度な仕事ができるはずなのにと。そうではなく、これが職業人としてのスタートラインだ。これをきっかけに経験を積んで初めてあなたの仕事は広がるのだと、私はFさんをかなり説得して送り出したのだった。

Fさんを笑える人は、実は少ないのではないかと私は思う。“伸びると聞いたのでIT系に転職したい”“注目職だからコンピュータの仕事を…”。世

間の言葉でしか志望職を語れない人がなんと多いことか。本当にやりたい仕事を見つけた人は、なぜやりたいか、自分のどの部分が向いているのかを語れるものだ。そして仕事も、そんな人にこそ引き寄せられていくものなのだ。