『 実力主義と自己認識の法則 』

“実力主義”という言葉に良い印象を持っている人は、実は意外と少ないのではないだろうか。実力主義の社会なんてせちがらい、年功序列や終身雇用のある種のんびりした面を見直してほしいという声もちらほら聞こえてくる。まだ実力主義を認めたくない。そんな空気が漂っているように見える。

しかし私が転職者の支援をする中で日々見えてくるのは、もう否応なく“実力主義”に傾いていく世の中なのである。特に中途採用の市場では、学歴など本当に見てもらえなくなっている。人事が戦略的に機能していて採用力のある会社ほど、転職者のスキルや業務経歴を重視する。志望会社がどんなスキルや業務経歴を求めているのか理解し、そこへぴったりはまるものを提示してみせられる人が優先的に採用されていくのだ。仕事の中で今まで何をしてきたのか。その全てを明確に語れるか否かが、ポイントになってきている。

ところがこの“自己を語る”という作業を、なかなか上手くこなせない人が多い。仕事の評価は他者にしてもらうというシステムに慣らされている上に、自分の目指すべき目標や人材像まで会社に決めてもらって過ごしてきた人があまりにも多いのだ。そこで私は、“あなたについて、ひとつとことん語りあってみよう”という方法で、転職者の自己認識を促すことにしている。

カウンセリングは大体以下の順番で進んでいく。●具体的にどんな仕事をしてきたのか●その仕事の中でどんな独自性を身に付けてきたか ●その独自性の中で強みだと言えるものは何か ●今後その強みを活かしてどんなキャリアプランを描くか …みなさんにお勧めしたいのだが、私のようなコンサルタントでなくて良いから、誰かを相手にしてこの語りあい作業を行なってみてほしい。できればあやふやな点に遠慮なく突っ込んでくれる友人が良い。酒でも飲みながらやってみれば、ヒートアップすることだろう。

一人で紙に書き出してみるのも良い方法だが、相手を置いて話すこの方法の方が効果的だと思う。四角四面な“文体”ではなく、自分の言葉で、他者にも理解できるように伝えなければならないからだ。自分の言葉で自分のことを真摯に話す。その経験があるとないとでは、本当に違う。今まで何をしてきたか、これから何をすべきなのか、いろいろなことが明らかになる。

実力主義を受け入れることに躊躇したところで、否応なくやって来るのならば、私たちは有利に活用していくべきである。それが図太いビジネスマンというものだ。語ることで自己認識するという作業は、別に転職する時でなくとも、あなたの今後の指針を決める上で役に立つはずだ。20代は、まだあちこちで迷いがあってもいい時期だとは思う。しかし30代以上になると、自分の強みや方向性をしっかり掌握しているか否かで、これからは差が出てくるだろう。ぜひ自分を語れる人になって頂きたい。みなさんのご健闘を祈る。