『 中高年とスキルの法則 』

採用面接で面接官に「何ができますか?」と聞かれて「部長ができます」と答える…。こんな笑話のような事はさすがになくなったが、スキル重視の転職市場に対応しきれない中高年の転職者は、まだまだ多い。

そんな中で、最近Rさんという51歳の営業マンがたいへん印象的だったので、少しご紹介してみたいと思う。Rさんは外資系のソフトメーカーで第一線のシステム営業を永年務めていたが、その会社が突然日本を撤退してしまった。通常キャリア転職の上限は40歳代までと言われ、営業職になるとそれが30歳代になる。当初私は正直に言って、51歳のRさんが経験を活かせるような転職先は、無いに等しいのではないかと感じていた。しかし…。

Rさんの経験業界に近い会社のパンフレットを、とりあえず彼に幾つか見せていた時だった。RさんはTという会社の取り扱い商品に目をとめ、嬉しそうにこう言ったのだ。「私、この会社の主力商品と競合する商品を扱ったことがあるんです。競合だからずいぶん研究しましたねえ…。だからどんな販売方法をとっていたかもわかるんです」。この一言が、Rさんの状況を逆転させた。T社はその時ちょうど、新進企業だけに営業方法が確立しきっていないこと、ベテラン営業マンが不在である状況に悩んでいたのだ。人事部門・営業現場の双方で面接が行なわれたのだが、営業現場からRさんにぜひ来てほしいという強い要望が上がった。「若手の自分たちは、Rさんのノウハウを学びたい。Rさんの営業を見て勉強していきたい」というものだった。

中高年の転職者のみなさんから今最も質問されるのは、「私は○歳なのですが、転職先はあるでしょうか?」ということだ。「部長ができます」という突拍子もないことを言う人がいなくなった代わりに、皆ずいぶん自信を無くし、「自分などダメではないか」という不安に駆られているように見える。不安を見せるよりも先に、「自分に何ができるか」をまずアピールする必要があると思うのだ。確かに中高年の転職市場は、かなり厳しい状況にある。だからなおさら自分のスキルを明確にし、スキルに添った転職先の情報収集を若手以上に行なわねばならない。そもそも年齢うんぬんに関係なく、何ができるかを明確に語れない人には、今の転職市場は等しく厳しいのだから。

営業現場からの声を受け、T社とRさんの間では、入社に向けた交渉が進んでいる。さすがに51歳ともなると正社員での採用は難しいが、T社はRさんのために新しい雇用形態を作ってでもRさんを迎えたいのだそうだ。Rさんもかなり乗り気である。自分をはっきり語れる人は、どんな状況にあっても結果を出せるものなのだと、私はRさんを見ていて思ったのだった。