『“資格”の法則 』
自分の転職に無責任な人が、また最近増えてきているように思う。その典型的な例が“資格さえ取得すれば希望職に就ける”と勘違いしている人たちだ。例えば我々のオフィスにも、MBA既得をアピールする人がたくさんやってくる。彼らはたいてい高学歴で、確かに風貌は優秀そうだ。コンサルや開発、マーケティング職を希望する人が多い。しかし、いざ話をしてみると…。
10人のうち9人ぐらいが、希望職の内容を把握していない。実際その仕事をするためには、どんな経験が必要なのか。どんなスキルが必要なのか。調べていないし、イメージできてもいないのだ。「資格を活かせばできると思います」と口を揃えて答えるのみ。私はガックリとなる。自分の転職なのに、自分の仕事の選択なのに、この人たちはなんて無責任なのかと思うのだ。
では、彼らが希望するような仕事を射止める人は、本当はどんな人なのだろう。マーケティング職へと転身したYさんを例にご説明しよう。Yさんは、20代後半の元営業スタッフ。取得資格といえば、大学時代に取った簿記3級と普通免許ぐらいである。書類上では特に目立つような人ではない。だが面談して驚いたのだが、Yさんは“なぜマーケティング職に就きたいのか”という自分の思いや考えを、いくらでも語れる人だった。マーケティングのどの部分が、今後のキャリア形成に必要であるか。営業職で培った経験とスキルをどのように活かすのか…。漠然と“その仕事がしたい”と考えているのではなく“なぜしたいのか、なぜ自分なのか”を論理立てて語れる人だったのだ。面談の時間が大幅に長引いて、私もYさんも空きっ腹をコーヒーのお替りでごまかしながら話し合ったのだが、疲れは全く感じなかった。最後に私は、Yさんにこうアドバイスした。「今話してくださったことをそのまま企業面接で言えばいいんです。あなたならきっと大丈夫ですよ」。
巷は資格ブームということで、各種の専門学校は勉強熱心な社会人で大賑わいである。ビジネス雑誌を開けば“今、買いの資格一覧”という見出し。確かに、資格所持が絶対条件の仕事も少なくはない。しかし大切な前提を忘れてはいないだろうか。やりたい仕事があるから、その仕事に必要だから、資格を取るのである。なんとなく魅力的な資格だからといって、取得してからその使い道を考えていると、かえって遠回りをすることになるのだ。本当の“資格”は、証明書の紙切れではない。自分は何をしたいのか。なぜしたいのか。その考えをまず持つことが、我々企業人の真の資格なのである。
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