『 自問自答の法則 』
転職すべきか。せざるべきか。今時のビジネスマンたるもの、一度は悩んだ経験がおありだろう。私も時々、メールや面談で真剣な相談を受ける。転職したいという希望自体が果たして是か、非か。プロの目で判断してほしいというわけだ。話を聞いてもっともだと思えば転職を勧めるし、甘いと思えば現職にとどまることを勧める。人材紹介オフィスだからといって、すべての転職を奨励するわけではない。むしろ、慎重に動いてほしいと願っている。
繊維関係の営業マン、Iさんの例をご紹介しよう。彼は半年ほど前に自宅でインターネットを閲覧し始め、あるサイトを発見した。そこでは、自分と同じ業界の関係者が、匿名で業界の内幕を語っていた。見たところ自分と似たような年齢・ポジション。よく見るとプロフィールに年収が書かれている。Iさんより100万ばかり多かった。サイトの管理者を「たいした奴じゃない」と思っていたIさんにとって、この年収はかなりのショックだったようだ。奴に負けられない。俺も他の会社でなら奴と同じくらいの年収が取れるはず。そんな思いが、Iさんの中で日に日に膨らんでいった…。
相談しに来たIさんに対して、私は2つの提案をした。ひとつは“今日の所は転職するしないの決定は保留にする”。もうひとつは“今晩自宅で、鏡に向かって自問自答する”。決して冗談ではない。鏡の前に立ち、自分の目を見ながら自分に聞いてみるのだ。もし自分が雇用する側であれば、Iという男に幾ら給料を払うか。その金額は、どのような根拠で決定されたものか。100万円年収がアップするのならば、アップした金額は、自分の仕事のどの部分の実績に該当するのか。また、それをロジカルに説明できるのか…。「鏡に向かってですか?宗教じみてますね」とIさんは不満そうだった。
別に宗教は関係ない。ファーストフードの店員教育でもなされているように、鏡に向かうと自己を冷静に客観視できるのだ。そこで、論理的な説明を自分に強いてみる。単純な迷いなら、これで解決できる。別に我々コンサルタントに頼らざるともできる、簡単な自己解決法だ。ぜひお試し頂きたい。
さてIさんであるが、後日メールが届いた。給与にはやはり不満だが、自社の評価システムに照らして考えれば妥当なラインかとも思う。あのサイト管理者の実績が直接わからない以上、比べるには無理がある。転職を完全にあきらめた訳ではないが、しばらくはここで粘ってみる…。といった内容だった。Iさんの選択は正しいと思う。不満と上手く付き合うことが、働くという行為には欠かせない。感情だけに流されて動くと、良い結果は得られない。
![転職、派遣、アルバイトまで!求人メルマガ [en]キャリアニュース](http://columnjob.en-careernews.com/images/en_logo.gif)
