『 求人広告とイメージングの法則 』

私の本職は人材紹介オフィスのコーディネーターであるが、実はときどき自社社員の採用面接も手伝うことがある。面接する対象の多くは、インターネットや求人誌の広告を見て応募してきた、営業マン志望の青年たち。その席で私は必ず、採用の合否に直結する、ある質問を投げ掛けることにしている。

「あなたは当社の求人広告をお読みになって、自分がどんな仕事をすることになるのか、具体的にイメージできましたか。どこにいて、どんな業務を任され、どんな表情で働いていましたか。ちょっと話してみてください」。うっと言葉につまる人もいれば、熱心に話してくれる人もいる。時には「営業カバン持って、○○駅北側の交差点で、取引先とのアポに遅れそうになりながら慌てて走ってます!」なんて臨場感のある話で盛り上がったりもする。

こんな質問が何の役に立つのかとお思いだろうか。実は私は、この一見ばかばかしい質問を通じて“面接者の思い描く理想”と“当社の仕事の現実”のギャップを測っているのである。つまり“ウチの仕事を本当に理解して来ているのか”を調べているのだ。例えば人材紹介オフィスの転職者の中にも、「入社したら自分の思っていたのと違った」と言って再度相談に来る人がいる。いくら能力的に充分合致する人材でも、仕事や職場に対して描くイメージがずれたまま入社してしまうと、お互いに不利益な結果を招くのである。

最近の求人広告は目的別・職種別のカテゴリー分けが進み、誰もが簡単に“自分に合った”求人にたどり着けるようになっている。しかし、そこで安心しないで頂きたい。目星をつけた求人広告をもう一度じっくり読み返し“自分が働いている現場”を詳細にイメージしてみてほしいのだ。どうしてもイメージできない求人広告は、信用しない。もしくは自分には向いていないと判断すること。イメージができれば、それをメモに書きとめて面接に行けばよい。かなり具体的な質問ができるはずだ。自分の描いた理想と、その会社の現実は、近いのか、掛け離れているのか。事前に知ることができる。

このイメージングの過程は、自分が本当は何をしたいのか、より深く考えるきっかけにもなる。また経験以上のことは想像できないはずなので、自分の能力に適した仕事を選別する材料にもなる。いずれにしろ“ホンモノの情報”は、机に向かったままでは手に入らない。求人広告だけで判断せず、まずは実際に行ってみることだ。面接が終わるまで、情報収集は続いている。