『 気持ちと仕事の法則 』
西暦の4桁目も変わって10日あまりが過ぎた。巷の正月気分も抜けてきたわけだが、我々のオフィスでは年始早々ちょっとした“事件”が起きたのだった。ベテランエージェントのEさんが、息子ほど歳が離れた転職者のUさんを怒鳴りつけてしまったのだ。我々エージェントは、普段は勿論“わきまえ”あるビジネスマンである。特にEさんは物静かな紳士で通っていたのだが…。
転職者のUさんは、ある大手都銀の出身者だった。経歴書を見ると内務部門でかなりいい仕事をしており、今需要の高い年金関係の知識もある。また数字に強いマーケッターとしてやっていける可能性もあった。だが父親が倒れてしまい、やむなく家業を手伝うために退職していた。1年ほど腹を決めてやってみたものの、Uさんはその家業にどうしても馴染めなかったらしい。
「どうせだめなんです私は。いまさら元の仕事に戻りたいなんて言っても、1年も無駄に過ごしてしまってはね」。バリバリ数字を扱う仕事に戻りたくて我々のオフィスを訪ねたはずなのに、Uさんはどうしようもなく投げやりだった。自信のない気持ちが、希望とは裏腹な言動にさせていた。今まで何社もの面接を受け全て不採用だったらしいが、この態度では仕方ないだろう。
あなたはもっと自信を持ってもいいはずだ。スキルも経験もあるのだから、後は前向きにさえなれば…。と我々が説得しても、Uさんは鼻で笑うばかりだった。「この1年で私の人生は狂ってしまったんですよ。もう、親父のつまらない家業に戻ろうかとも思うんです」。諦めましたというその口調に、それまで黙っていたベテランエージェントのEさんが爆発してしまったのだ。
「なにも努力をせず周りのせいにする君より、君にとってはつまらぬその仕事で君をここまで育て上げたお父さんのほうが、人間として何倍も立派だ!それすらわからぬ君を採用する企業など確かにないだろう!」。図星をさされ唖然としたUさんは次に怒りだし…。そして帰ってしまった。エージェントのEさんも、ビジネスマンらしからぬことをしたとしきりに反省していた。
しかし数日後、私にUさんから連絡があったのだ。「言われっぱなしは悔しいのでもう一度本腰を入れて転職活動します」と。EさんはUさんにとって見返すべき敵、となってしまったわけだが、それで気持ちが奮い立ったのだから結果オーライというところなのだろうか。年が変わっても環境が変わっても、結局自分を良くも悪くもするのは自分自身でしかない。見違えるほど積極的になったUさんは、来週から何件もの面接をこなしていく予定だ。
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