『 転職と市場の法則 』
相次いだ台風などの影響で、生鮮野菜の価格が高騰している。筆者が先日のぞいたスーパーでは、1本100円以上に暴騰したキュウリが山積みに売れ残っていた。容赦なく素通りする主婦たちを見ながら、私はスーパーの店員さんを気の毒に思ったのだが…。悲しいかな、これが市場原理というものなのだ。
実は転職者のみなさんも、刻々と移り変わる転職市場の中に身を置いている。求められるスキルは、常に同じではない。社会情勢や各業界の動向によって変化する市場に、みなさんも対応しなければならないのだ。しかし多くの転職者と接していると、その認識があまりにも薄いことに驚かされる。
ひとつの例をご紹介しよう。貿易業務のスペシャリスト、Wさんの失敗談だ。商社を退職した彼が、私たちの前に現れたのは2年ほど前。10年以上のキャリアを持ち、語学も堪能なWさんの転職先は、その当時なら“より取りみどり”の状態だった。ところが、Wさんは候補企業の一覧を見るなりこう言い放ったのである。「私のスキルなら、もっと上を狙えると思うんですが…」。給料がよくない。仕事内容が低レベル。前職より低ランクの企業だから嫌。私たちが何回となく情報提供しても、Wさんは面接にさえ行こうとしないのだ。確かに貿易業務では目を見張るスキルを持つWさんだが、人材には“旬”というものがある。Wさんがぐずぐずするうちに、不況は本格化。彼自身の離職期間も求人企業側の許容範囲を越えてしまった。2年前、あれだけ転職先を選べたWさんだったのに、現在は1社の求人もない状況が続いている。
自分のキャリアに自信を持て。できるなら私も、すべての転職者の皆さんにそう言ってやりたい。しかし転職者の価値を決めるのは私や皆さん自身でなく、市場なのだ。高いスキルを自負していても、市場がそのスキルを常に求めているとは限らない。転職者はそのことに、もっと敏感になるべきである。
現在転職を思案中の方、“転職市場の確認”に抜かりはないだろうか。希望業界の現状を、もう一度調べ直してみてはいかがだろう。さらに、あなたの経験・スキルは求められているだろうか。簡単な調べ方としては、各種求人情報の応募資格欄を1ヵ月通しで見るという方法がある。自分の経験と合致する募集がない、もしくは少ないなら、すぐには動かないほうがよい。
市場動向によって物の価値が変化していくように、私たち職業人の価値も刻々と変化し続けている。“流通すれば売れる”という時代ではなくなった今、私たちも市場感覚を持ち、自己のマーケティングを行わねばならないのだ。
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