『 きっかけの法則 』

小さな出来事にも敏感に反応する人は、感受性が豊かな人だと思う。最近、このことを痛感したことがあった。できる人ほど小さなきっかけに目ざとく、その先の変化を見据えて手を打つのだなと。

A社という会社であった話だ。A社はかねてから技術力には定評があり、優秀な人材が揃っていることで有名な会社だった。が、ある日を境にA社からの転職希望者が市場に急増したのだ。一体何があったのだろうといぶかしみながら、私はそのうち何人かと話をした。

彼らが一様に話す転職理由は、「技術部門の部門長が退職するから」だった。人望の厚い上司の後に続くつもりなのだろうか?だが、市場に出てきているA社の転職者は技術部門出身者ばかりではない。営業部門や管理部門の出身者も多く、彼らもまた「技術部門長退職」を転職理由に挙げていたのである。

詳しく話を聞いてみると、どうもただの人望人情劇ではないようだった。A社の技術部門長は社員たちの間で、陰のキーマンとして以前から認識されていた。技術知識に疎く、方向性を見失いがちな経営陣を御してきたのがこの部門長だったのである。A社の技術レベルは彼によって保たれていたのだ。

もちろん、全ての人が転職を考えたわけではない。技術部門長の穴を埋めるべく、自分たちで代わりを何とかできないかと動く社員もいるらしい。出ていく人、残る人、選択はそれぞれだが、何かしらの手を打っている人が数多くいるのには驚かされる。転職希望者は評判通り順調に行先が決まりつつあるが、残る人は残る人で会社の危機を乗り越えるのではという気もする。

A社の場合、きっかけは「一人の役職者の退職」だった。それ自体は小さなきっかけに過ぎないが、社員たちは後に続く大きな変化を見越して先手を打ったのだ。外へ出る人、残る人、選択は様々だ。が、今回の件で、私は変化のきっかけとなる出来事を見極め、どんな変化が起きるのか予見することの大切さを感じたのだった。さて、対処すべき変化のきっかけを、私たちは見逃さず捉えられているだろうか?