『 ポイントの法則 』

完璧主義も度が過ぎると、逆に何もできなくなるという話を聞いたことがある。ひとつひとつの過程を100%やろうとするあまり、どう頑張っても100%に届かない所でつまずいてしまうというのだ。しかし、100%とは何だろう。完璧とは何だろう。思い描くものは人それぞれで確たる実体などなく、だからこそ、こだわればこだわるほどキリがないと私は思うのだ。

転職者の方々と接していても、自分だけの“完璧”にこだわるあまり、空回りしている人と時々出会う。例えば2カ月ほど前に会ったRさんは、“己のすべてを伝える”ことに執着する人だった。Rさんは10年近くのキャリアを持つ、脂の乗ったエンジニアである。経歴書を見た企業はこぞって会いたがったし、自らが望む大抵の企業に入れるスキルをRさんは持っていた。

なのに面接段階に進んだとたん、Rさんは落とされてしまうのだ。我々のオフィスへ来る前には11社連続で落ちたという話を聞き、私はRさんの面接に同行してみたのだった。そして、無理もないと思った。論点の見えない話を延々続けたかと思えば、ふっと答えに窮すると押し黙ってしまう。また、見ているこちらが心配になるほど、常に不安げで何かに焦っている。

「必要なことすべてを話そうとするうちに、何を言っているのかわからなくなるんです」と、Rさんは“作戦会議”で苦しげに打ち明けた。真面目な人なのだ。真面目さの向かう先がずれているだけなのだ。私はRさんに言ってみた。「あなたの思う“必要なこと”は自己満足に過ぎないのではないですか。面接官が本当にそれを聞きたいかどうか、考えてみたことはありますか」

まず、適度に流せないがために自信をなくしていく悪循環を断ち切ろうと、私はRさんに提案した。さりとて真面目な人間が突然変わることはできない。だから1つだけ“完璧に”実行するのだ。「結論を最初に言うんです。面接官はポイントがわかればOKなんですから。後は好きなだけ付け加えて構わない。結論さえ伝わっていれば、向こうが勝手にさえぎってくれますよ」

「そんなものなのですか」と、Rさんは驚いて聞き返した。「そんなものです。いいかげんという意味ではなく」と私は答えた。完璧な人間などこの世にいないとわかっていながら、人は完璧な自分を求めがちだ。だが、自分が他人に完璧を求めない優しさを持っているように、他人も人に完璧など求めてはいない。唯一求めるものがあるとしたら、それは他をカバーする“ポイント”なのだ。Rさんは今、着実にコツをつかみながら面接をこなしている。少しずつ自信を取り戻す彼を見ていると、良い知らせももうすぐだと感じる。