『 運と不運の法則 』

毎月幾つもの面接をセッティングしていると、「転職とは難しいものだ」と心から感じる時がある。最終的には運が全てを分かつのではないかと。しかし不運に直面した時に、その人の真価が明らかになることもある。最近出会ったCさんのケースでは“不運だったCさん”に私が逆に励まされてしまった。

Cさんは元々某流通系企業の経営企画室に勤務していた。経営戦略の立案や新規事業の発案・推進をする、その道のプロである。様々なプロジェクトで成果を出し順風満帆に働いていたのだが、Cさん自身は、その会社でやれることはやり尽くしたと感じたらしい。新天地での経営企画を希望していた。

そこへ誘いをかけて来たのが、ベンチャー企業A社に勤めるCさんの友人である。全面的な制度改革を準備しており、ぜひCさんに手伝って欲しいとのことだった。私とCさんはA社へ何度も足を運び、友人・A社役員と納得の行くまで話し合った。Cさんは充分にA社を理解して入社した、はずだった。

はずだったというのは、入社前に知りようもなかった障害がCさんを待ち受けていたからである。A社の社内は2つの派閥に分かれて抗争していたのだ。自分の会社に派閥抗争があるなど、絶対に言えるはずもないことはわかる。しかしなぜそんな状況で誘ったのか。私は正直、Cさんの友人を恨んだ。

だがCさん自身は、1年間やれるだけのことをした。改革案を上げると、片方の派閥は賛成する。するともう片方の派閥が猛反対する。その繰り返しだったらしい。そして先日、とうとうCさんから電話がかかって来た。「なんだか私が辞めさせられることになっちゃいました。またお世話になります」

本当に不運でしたねと、私はCさんに言った。すると彼は笑ってこう返したのだった。「あなたまで運を嘆いてどうするんですか」と。どんなに注意を払っても、思わぬ理由でプロジェクトが失敗することはある。今回も同じことだ。難しいからこそ、嘆く前にやるべきことがあるとCさんは言った。私は感服しつつ、Cさんの面接先ピックアップに心して取り掛かったのだった。