『 経歴書と自省の法則 』
日本の経歴書も、相手先のニーズに即したスキルを効率的にアピールするものへと変化しつつある。…前回そんな情報をお伝えしたところ、御質問を幾つか頂戴した。「具体的にどんなことを書けばよいのか」と。本来は皆さんの経歴書を添削・推敲し、ブラッシュアップするほうが確実なのだが、ここではスペースがない。そこで今回は経歴書作成にあたっての基本的な考え方をお伝えしたいと思う。考え方だけでも押さえれば、随分違うはずなのだ。
失敗談を例にとってご説明してみよう。大手ソフトメーカーのアメリカ現地法人で開発部長を務めていたUさんの話である。その会社を退職し、帰国間もなく私たちのオフィスへやって来たUさんの希望は、日本で暮らしたいので在日本の外資系ソフトメーカーを紹介してほしい、ということだった。しかし、Uさんの経歴書(英文レジュメ)を見て思ったのだが、なにか“うさんくさい”のだ。いろいろと華々しい功績が、志望先のニーズに即してソツなく書かれているのだが、どうもその中身に具体性が感じられない。Uさん自身の功績ではない可能性もある…。案の定、経歴書を見たUさんの志望先から指摘の電話がかかってきた。「この方、ウソをついていますね」。同業の目をごまかすことはできないのだ。「例えばこの業務なんですけど、1人では到底できないはずなんです。でも1人でやったように書かれていますね。個人として、そこへどういう形で関わって、どんなスキルを得たのかが書かれていないんです。人物的に少々不安ですので、面接は見あわさせていただきます・・・」。
エンジニアとしてのUさんは、悪くはない人だったと思いたい。しかし、Uさんなりに懸命に色を付けたアピールが、結局はUさんの売り込みポイントを拡散させる結果となったのだ。嘘を書いても大抵はこうしてバレる。だが本当のことを書いていても、Uさんと同じような道を辿ることがあるのだ。“何にどういう形で関わり、どんな働きをし、結果としてどんなスキルを得たか”というポイントの抜け落ちた経歴書があまりにも多いのである。採用側は功績の自慢話ではなく“結局、何ができる”のかを知りたいのだ。
個人やチームで成し遂げた功績や、経験してきた業務を羅列していくだけなら楽に違いない。記録をひもとけばいいのだから。でも、これからは特に、そんな経歴書はどんどん通用しなくなる。経験業務や功績を通じてあなたは何を身に付けたか。どんなスキルを手にしたのか。自分の仕事のひとつひとつを深く省みながら書面にまとめていかねばならないのである。確かに簡単な作業ではない。それでも、今後こうした厳しい環境に置かれていく私たちは、以前の私たちよりもかえって幸せなのではないかと思う。自分が何をしているのか、どこを目指しているのか、深く見つめることができるからだ。
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