『 評価と人材理念の法則 』

10の企業があれば、10通りの評価制度がある。それほど、従業員を評価する方法は各企業によって違うものだ。また働く私たちも、どんな評価のされ方をしたいかは本当に人それぞれだ。だが転職時に、意外と後回しに考えてしまいがちなのが、この評価制度である。評価への納得感は仕事への意欲を左右するものだけに、少しでも自分に合うものを選択すべきだと私は思う。

そこで今回は、評価制度が転職の決め手となった、ある興味深い例をご紹介してみよう。話の中心は、27歳のエンジニアFさん。順当に2つの企業からの内定を得たFさんだったが、最終的な局面でFさんはなかなか結論を出せずにいた。どちらかの企業を選ぼうにも、どちらも似たり寄ったりな条件だったからだ。同業企業に複数応募したエンジニアがよく陥る場面である。

仕事内容も、企業規模も、待遇もほとんど同じ。勤務地こそ違えど勤務時間もさして変わらない。またFさんの上司となる予定の人物も、個性こそ違えどそれぞれに魅力があり、甲乙つけがたいのだった。では、両社の違う点は何なのか。選択基準を見失い悩みに悩んだFさんが、両社の差異をいろいろと探していって見つけたのが、評価制度の違いだったのだ。

一方のA社は、海外の評価制度を自社向けにカスタマイズしていた。評価が数量化されて表される、いわば実績重視のシステマチックな評価方法である。もう一方のB社は、評価者の主観を重視する感覚的な評価方法だった。ファジーである分、多くの人が評価に参加する。実績や成果を出した過程や、その会社貢献度までを測ろうという意図で構築した評価制度なのだという。

そしてFさんは、B社の感覚的評価を選んだ。「成長過程も評価の形で認めてくれる企業だから、目標に対し前向きになれる」という理由だった。興味深いことに、その後すぐ別のKさんという人が同じ2つの会社の内定を得た。Kさんも同様に悩んだのだが、彼は反対にシステマチックな評価方法を選んだのだった。「数量化された評価にこの企業の公平な社風を感じる」というのがKさんの理由だった。本当に評価に対する考え方は人それぞれである。

企業の、人材に対する考え方も人それぞれである。人事制度は大きく分けて採用・教育・評価の三本柱で成り立っているが、企業の持つ人材理念が最も色濃く反映されるのが“評価”の部分だろう。どのような評価方法をとっているかで、企業の人材に対する考え方がわかる。だから私たちは評価制度から、その企業の考え方を読み取ることができるのだ。自分にマッチした評価制度を選ぶことは、自分と考えの合う企業を選ぶことに他ならないのである。