『 紹介会社と信頼関係の法則 』
法律改正以来、人材紹介業界の雰囲気が、少し変化している。許認可が受けやすくなったことで、新興の紹介会社が一気に増えた。それに伴って、以前まで守られていた業界内でのコンセンサスが崩れてきているのだ。例えば、人材を企業に紹介するタイミングについてである。本来ならば転職者本人の承諾を得てから、企業にその転職者の情報を流すのが“スジ”なのだが…。
実際に困ったことになったケースを例に挙げて話をしてみよう。転職者は、通信エンジニアのBさん。Bさんは初回の転職にしては抜かりのない人で、紹介会社それぞれの得意分野を調べた上で、我々のオフィスも含め4社ほどに人材登録していた。そこで情報収集をしながら、抱えているプロジェクトの区切りがついてから本格的に動きたいというのが、Bさんの希望だった。
さてBさんの仕事にも一段落がつき、いよいよ応募先を絞り込もうかという段階になる。Bさんと私はIT系企業のT社を第一ターゲットに選び、T社に連絡を取ったのだった。ところが、である。T社は「1カ月前に別の紹介会社からBさんの話が来ていて、断った」と言うのだ。本人の全く知らないところで、Bさんは勝手に応募させられた上に不採用となっていたのだ。
これにはBさんも私もまいった。しかもその紹介会社は、的外れな職種でBさんをT社に紹介していた。Bさん本来の志望職で応募し、スキルをきちんとアピールした上での不採用なら、まだ諦めもつく。「面談の時、ちょっとT社に興味があるということを言っただけなのに…」。後からわかったのだがその紹介会社は、他にも3社ぐらいの企業にBさんを紹介していた。
結局、納得できない私はT社を直接訪問して事の顛末を説明したのだった。Bさんが本来どの分野に強い人材で、どの職種で迎えれば力を発揮するのかも。T社には“不採用者を以後1年間採用してはならない”との社則があったのだが、有り難いことに、別の職種での採用ならOKだろうというイレギュラーの対応をしてもらえることになった。今、順調に面接が進んでいる。
皆さんに向けてひとつ自衛策を挙げると“自分の了承なしに紹介しない”との確約をとっておくことだ。確約を迫られて渋い顔をする会社は信用しないでいい。人材紹介会社の生命線は、転職者との信頼関係である。それを守れない会社は少数だと、私は思いたい。人の気持ちを汲めないビジネスマンが成功しないのと同じことだ。人と人の繋がりを軽く見る会社も成功しない。
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