『 熱意と現実の法則 前編 』
うーん、何と言えばよいのだろう。たいへん長丁場だけども面白い時間をあ る登録者の方と過ごしたのだ。1つの事をここまで長時間話し合ったのは久 し振りだったので、今回は2週に分けて皆さんにもご紹介していきたいと思 う。話の相手は、某都市銀行出身のKさん。有名国立大経済学部卒の好青年 の方で、銀行では審査部門に所属していた。ハイスキルかつ仕事熱心な人な のだ。
面談室で向かい合い、私はまず銀行出身者の求人状況が決して良くはないこ とを、率直に伝えたのだった。「しかしあなたのスキルなら、リスクマネジ メント系の金融コンサルタント等で引き合いがありそうです。新興の外資系 を中心にあたってみては」。ところがKさんは思わぬことを言いだしたのだ。
「私の志望は違うんです。実は他にどうしてもやりたいことがあるんです」。 我々人材コンサルタントの勧める職務に難色を示す人自体はそう珍しくはな い。だから私はKさんの志望をはっきりさせ、実現性があるかどうか彼とす り合わせを行なおうと考えたのだが…。「時計の商品企画をやりたいんで す」。予想をあまりにも大きくはずれる答えに、私は思わず面食らってい た。
「プレミア物などが多く出ており、ファッションウオッチは将来性を感じさ せる分野です。昔からモノづくりに関わりたいと思っていたので、金融より そちらをやりたいんです。私のような人材が加われば、さらに数値化した マーケティングが可能になるのではないかとも思いますし…」。「ちょっ と、待ってくださいKさん」。私はあわててKさんの言葉をさえぎった。 「あなたは、そういった職務に関しては経験をお持ちでないはずでしょう」。 「はい、ありません。しかし」。Kさんは身を乗り出し、熱意のこもった目 で私に言うのだった。「私なら、できると思います。研修さえ受ければ、 きっと」。
そして3社ばかりの社名を挙げ、Kさんは私に迫るのであった。「これらの 人事担当者とぜひ会わせてください。会ってさえ頂ければ、わかってもらえ るはずです」。さてどうしたものか…。私は、話の接ぎ穂を探るように再び Kさんの経歴書に目を落した。そこに書かれていたのは、優秀な金融マンで あるKさんの姿。優秀な金融マンだが、商品企画に関しては、どう見てもま ったくの素人なのである。いったい、Kさんのこの“自信”は、どこから出 てくるものなのだろう?彼のこの熱意に、私はどうやって応えればいいのだ ろうか?そんなわけで私とKさんのやりとりは、次週に続くのであった。
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