『 成功する転職の法則 』

「転職の法則もいよいよ50回ですねえ。まさかこんなに続くとは思いませんでしたよ」と、当メール新聞の編集S君が、祝いとも嫌みともつかない言葉を私にかけてきた。「どうですか?50回記念ということで、今までの振り返り企画でもやりませんか?」。「うーん」と言葉を濁す私に、更に問いかけるS君。「前から思ってたんですけど、結局、転職成功の法則ってズバリ何なんでしょうね」。「ズバリって…。一言で言えないから50回も続いてきたんじゃないか。転職には人それぞれ色んな事情や展開があって…」。「でも転職成功者に共通して言えることは何かあるでしょう」「うーん」。考え込みつつも“くやしいが一理あるかなあ”と私は思ったのだった。

例えば私の知り合いに、通信関連企業で技術部門の課長職を務めるIさんという人がいる。彼はその企業へ、10数年前に転職した。10数年前というと、転職という手段がまだ世間的に殆ど認知されていない頃だ。「厳しかったですよ。転職なんて、ちゃんとした人間のすることじゃないと思われていました」。その頃に比べると、今は、なんて転職のしやすい世の中になったのだろうとIさんは思うのだという。「でも、あの時転職しておいて良かったと心から思うんです。こうして、やりたい仕事ができるんですから」。

以前ここで紹介した“何が大切か、の法則”のKさん、そして“幸福な転職、の法則”のG君も、Iさんと同じく「転職して良かった」と言う人の代表的な例だろう。彼らに共通しているものは何か。それは、ひとつの目的を実現するために転職を選択している、ということなのだろうと私は思う。大切なのは、彼らが現状への不満から転職を決意したわけではないということだ。別に今のままでもいいが、しかし自分は、本当はこうありたい。あるいは、こんな自分を目指したい。転職する動機がポジティブなのである。

転職の過程はまさに十人十色。セオリーというものがない。だから、“ズバリ成功の秘訣は”という編集S君の問いかけは少々乱暴かもしれない。しかしあえて答えを出すとすれば…「不満を抱えたまま転職しないことだろうね」と、私はS君に言ったのだった。「誰しも不満は持っている。だが、その不満を“だからこうありたい”という目的に昇華しないまま走り出してしまうと…」。「結局、目的の場所は見つからないということですね」とS君はうなずいた。「前向きな目的を持て、か。僕にはあるんだろうか…」。「良かったら今度相談に乗るよ」。「いやあ今は遠慮しときます」。私とS君は笑いあった。「じゃあ50回目の原稿、その内容でお願いしますね」と去っていくS君。そこではたと気付いた。私は、彼に上手く乗せられていたのだ。