『 人材コンサルタントの法則 』
面談室で初めて向かい合ったMさんに、私はいろいろな質問をした。彼が携えてきた経歴書を補足する説明を求めたり、転職希望条件について突っ込んだり、将来的なキャリアプランを問うてみたり…。何故か面倒臭そうに答えていたMさんだったのだが、どうも反応が鈍いと思っていると、そのうち彼は怒りだしてしまったのだった。「今まで使ってきた人材紹介会社では、そんなにしつこく聞かれることはなかったですよ。必要書類に記載した情報で充分でしょう。あなたは面接をセッティングしてくれるだけでいいんだ。」
Mさんは40代のコンピュータエンジニアである。人材紹介会社を通じて3度の転職を経験しているが、その勤め先のどれもが大手有名企業。彼の経歴と転職意向の情報を流せばたちまち数社からのオファーがある、それほど優秀な人だ。今まで転職に関してはさほど苦もなく成功をおさめてきただけに、Mさんが私の“面倒臭いやりかた”に苛々するのも、当然と言えるかもしれない。しかし、それでも私は、Mさんに忠告したのだった。「スマートなやりかたで3度成功したのは、Mさん、たまたま運が良かったからですよ」と。
人材コンサルタントに頼みさえすれば、いい仕事がまわってくる。他の方法ではアプローチしにくい企業とも、簡単にコンタクトがとれる。皆さんはそう考えてはいないだろうか。確かに、我々コンサルタントは便利な“媒体”ではある。各大手企業の人事にも皆さんのことをダイレクトに伝えられるし、皆さんに合った企業を選別もする。もろもろの交渉事だって肩代わりする。
ただ何というか…いくら精度の高いマッチングシステムといえど、すべては人対人のことなのである。私はそこが人材紹介の弱みであり、また強みでもあると思うのだ。“うるさくない人材コンサルタント”は手軽で良いが、皆さんについてあまり知ろうとしない欠点がある。彼が皆さんのためにかき集めてきた企業からのオファーも、一見マッチしているように見えて、実は長期的に見ると全く合っていない…運次第では、そんなことも起こりえるのだ。
転職者が何かを言えば言うほど、引きだせるプラスアルファが増える。逆に何も言わなければ、必要最低限のものしか出てこない。人材コンサルタントとはそうしたものである。コンサルタントを使いこなすには、まず自らのキャリアプランに関する明確な指針を彼らに伝えることだろう。キャリアプランが描けていない人は、正直に相談してみるのも良いと思う。その場限りの転職ではなく“あなたという人とその展望”を理解してアドバイスや転職先の紹介をできるのが、我々の最大の強みなのだから。少なくとも私は、転職者の成功を運任せにしないコンサルタントでありたいと、強く願っている。
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