『 仕事力の法則 』

この仕事を一生続けていて大丈夫なのかなあ。と、一度は考えてしまったことがないだろうか。どの業界も、絶対安泰とは言いきれない。自分の担当する仕事が、将来も絶対必要とされる保証はない。そんな気持ちが最近、その時々の人気職種を脈絡なく志望する人を増やしているのかもしれない。

だが私はむしろ、こんなご時世だからこそ、ひとつの仕事を一貫して続けていくことの意味を認識し直したいと思うのだ。業界を変わるにしろ、幅を広げて新しい分野にも挑戦するにしろ、これと決めた“コアとなるキャリア”を追求していくことの意味は大きい。以下に例となる話を挙げてみよう。

例は30代後半の営業職、Wさんである。Wさんは元OA機器販売会社の営業であり、7年間コンピュピュータとその周辺機器を企業向けに販売してきた。だがそれはもう8年も前の話だ。Wさんは「更に提案型の営業がやりたい」と思い立ち、コンピュータとは無縁の別業界に転職していたのである。

そんなWさんが、もう一度コンピュータ業界に戻りたいと我々のオフィスを訪ねてきた。8年のブランクの間に業界はすっかり様変わりしている。Wさんの以前の知識や実績は、すっかり陳腐化して通用しない状態になっていた。だが半ば駄目もとという気持ちで、ある外資系にWさんを紹介してみると…。

なんとあっさり採用が決まったのだ。私は先方の人事に採用理由を聞いてみた。すると、Wさんのような営業がずっと欲しかったという答えが返ってきた。確かに彼の知識は使い物にならない。しかしそれを補って余りある営業スキルがあると、先方はWさんを評価した。「知識のある営業は幾らでもいますから。“セールス”の何たるかを経験で体得した方が欲しかったのです」

ひとつの仕事を極める。それは職業人の基盤を作る大切な作業だと思う。Wさんの場合は営業職だった。これと決めた分野を追求して得られるものは、経歴書に書く実績や経験内容だけではないと思う。たとえそれらが時代の流れと共に陳腐化しても、実績と経験の積み重ねによって得られた“仕事の技術力”は色あせない。その“仕事力”こそが私たちの最大の武器となるのだ。