『 決断と相談の法則 』
このまえ転職先が決まったUさん、そう言えば明日が初出社日だなあ…。ボーッとしながらそんなことを考えていると、当のUさんから電話がかかってきた。「申し訳ないんですが、明日からの入社、やっぱりやめたいんです」。
このくらいのことでオロオロしては、人材紹介のコーディネーターは勤まらない。至極冷静に理由を問い正したのだが、返ってきた答えには、さすがの私も椅子からズリ落ちそうになった。「友達がやめとけと言うんです」。
Uさんは30歳手前のエンジニア。化学系の学部を出たあと、ほとんどの年月を派遣社員として働いていた。このままでは将来が不安でたまらない。なんとか正社員として落ち着ける口を見つけたい。Uさんは最初、そんな切実な思いで、私たちのオフィスに駆け込んできたのだ。
しかも、転職先が決まるまでさんざん苦労した。2年にもおよんだ活動期間の中で、なんとか面接までこぎつけた企業は、わずか6社。だが、年齢の割には浅い実務経験しかないという理由で、6社中5社から不採用を言い渡されてしまう。八方ふさがりのUさんにとって、ようやく内定が出た6社目の会社は、30代を安心して迎えられる最後の砦だったはずなのだが…。
「内定と聞いていたのに、様子がヘンなんだ」。Uさんは友達という友達に電話して、不安な胸の内を相談しまくっていたのだ。自分と時を同じくして、他の紹介会社からも数名の人が面接に来ている。コーディネーターは“儀礼上のことだから心配ない、採用はあなたで決定している”と言うけど心配だ。他にいい人が来たら、俺の内定を取り消すんじゃないだろうか…。
「お前の言うとおりだ。そんな会社は信用できない」「仮に入社しても、何かあったらすぐに辞めさせられるぞ」。Uさんの話を聞いた友人たちは、口々にそう言ったという。そして彼らの熱心な説得のもと、Uさんは私に入社辞退の電話を入れる決意をしたというのだ。“そんな無責任な奴らは友達じゃねえ!”と怒鳴りたいのを必死でこらえながら、私は受話器を置いた。
迷ったときに相談できる人たち。それは確かに頼りになる存在だろう。しかし“相談”イコール“人に決めてもらう”ことなのだろうか。人生を左右する決断まで、他人まかせにしていいのだろうか。アドバイスは受けても、最後の最後で頼りになるのは、自分自身でしかないはずだ。Uさんは結局、30代となった今も、なりたがっていた正社員になれないでいる。
![転職、派遣、アルバイトまで!求人メルマガ [en]キャリアニュース](http://columnjob.en-careernews.com/images/en_logo.gif)
