『 U・Iターン転職の法則 』
怖い噂話を聞いたことがある。舞台は、豊かな自然に恵まれた、日本のとある地方。周辺には国立公園などのレジャースポットがあり、教育機関や公共施設、ショッピング施設も充実している。自然環境と生活の便を兼ねそろえた理想的な地として“田舎暮らし”を希望するファミリー層に人気だ。その地に、都会からの転職ファミリーを積極的に受け入れている企業がある。
広い社宅が用意され、待望の田舎暮らしがスタート。確かにまわりは緑いっぱいで、申し分ない環境だ。しかし…。しばらくすると越してきた家族は皆、その土地での生活に耐えられなくなってくる。夫は会社の同僚から無視され、妻は近所の井戸端会議に加えてもらえず、子供は学校でいじめられ…。つまり家族ごと、その土地の人々から除け者にされるのだ。都会から来た奴らに仕事を取られてたまるかと、会社の同僚たちが地域ぐるみで画策しているのである。こうして、都会から来たファミリーのほとんどが逃げ出してしまう。ローン途中の一戸建を残したまま、泣く泣く去る家族もあるという…。
以前ブームだった頃のような盛り上がりは無いとはいえ、田舎暮らしを希望する人が、まだまだ多いようだ。郷里に帰るUターン、郷里以外の地方に移り住むIターンといった言葉もすっかり定着した。ビジネスマン向けの雑誌を開けば、地方に移り住んで成功した人の話や、地方の成長企業・ベンチャー企業の華々しい記事。“田舎でもこんな最先端の仕事ができるんだ”“自分もこんな素晴らしい家を建ててみたい”…。いやがうえにも夢があおられる。
しかし、ちょっと冷静に考えて頂きたい。田舎暮らしの成功例を紹介する雑誌の記事などは、その土地の一部分のみを紹介している。“地方の最先端企業”が実際にあるとしても、皆が皆そんな企業へ入社できるとは限らない。車のエンジンの設計をしていた人が、エンジンの隅にある小さな部品を設計することに…。そんな事態も、充分ありえる。また、運良くいい会社と仕事を見つけたとしても、その会社を支える地元の産業構造まで調べてみただろうか。さらには、以前その会社に都会から転職してきた人が、どんな暮らしぶりをしているのかも…。“住環境も仕事も大満足!”。そんなマスコミの記事はいったん頭の中からクリアして、自分の目で確かめてほしいのだ。
田舎に移り住むということは、転職先の会社が潰れようとも、辞めざるを得ない結果になっても、そこに住み続けねばならないという意味を持つのだ。本当に住み続ける覚悟はあるのか。本当に住み続けるに値する土地なのか。ぜひとも家族みんなで、充分に考えた上で答えを出してほしいものである。
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