『 経験活用の法則 』

多くの転職者と接していると、「○○の経験があれば、あの会社には行けそうだ」という考え方に基づいて行動している人が時々目に付く。それはそれで“内定をもらう”ことだけを目的とすれば正しい行動指針と言える。しかし、それだけでは望ましい転職は出来ないのではないかと、私は考えるのだ。

28歳の営業、Wさんの話しが良い例になるのではないかと思う。Wさんは勤めていた中堅食品商社を業績不振から自主退職しており、転職に対しかなり保守的になっていた。我々のオフィスへ来るまでに自己応募で受けた会社は4社。いずれも食品業界経験や顧客開拓経験を求める営業の募集だった。

Wさんが言うには、そのうち2社には内定したのだという。だが、少しでも早く落ち着き先を決めたいと思いながらも、最後の最後で辞退してしまった。「ほっとしたものの、これでいいのかと考えてしまって」とWさんは言う。辞退された企業も「ああそうですか」と素っ気無く了承したのだという。

辞退して良かったですねと私はWさんに言った。彼は“経験を活用して入社できる所”という視点で転職先を選んでいた。だがそこには“経験を活用し今後何をするか”という視点がない。やる気が出るわけがないのだ。

その後私とWさんは何度かのミーティングをし、経験を土台に今後何をするか考えて応募先を決めることになった。Wさんは検討の末、某大手外食チェーンのSV候補を選んだ。前職でも積極的にリサーチ会などを企画していたWさんは、マーケティングや経営に近い場所を目指しつつエンドユーザーの顔も見られる仕事に魅力を感じていた。企業側もWさんのそんな気概を歓迎した。こうしてWさんは、キャリアの幅を広げる希望と共に転職していった。

“経験を活かす”とよく言うが、それは“経験範囲内でできることをする”という意味ではない。経験をステップに自分自身の幅を広げる、求めていた仕事をその手につかむからこそ“活かす”と言うのだ。そして経験やスキルを活かし幅を広げていける人こそが、市場で真に求められる人材なのである。