『 ハードな仕事の法則 』

仕事がハードすぎて体力的について行けない、というのは転職時によく語られる退職理由である。私も今まで色んな“ハードな仕事ぶり”を聞き、たびたび驚嘆してきた。しかし、先日やってきた25歳のRさんのそれは、群を抜いていた。最初は物静かで少し無愛想な人だとしか思わなかったのだが…。

Rさんが勤めていたのは、ある国際商社である。勤めていたと言っても、職場に顔を出せるのは1年のうち3分の1もあるかないか。どこそこの国で目当ての商品が手に入ると聞けば、必要な機材を船に積み込んで世界中のどこへでも急行する。そんな生活を新卒で入社してから3年続けてきたそうだ。

英語も満足に通じない初めての国で、現地スタッフをかき集め、仕事を割り当て、指揮する。Rさんの立場は“常にぶっつけ本番の現場監督”と言ったところだった。平均睡眠時間は年間を通じて2~3時間。スケジュールが狂うと、船に乗ったまま洋上で1カ月以上カンヅメになることもあるという。

食べ物も行く先々で違う。見慣れない料理ばかりなので、食べられそうなものだけ選んで腹に詰め込む。だからたまに日本へ帰ってくると、さぞ気が休まったろうと思ったのだが、そうではなかった。帰国すると即研修に入り、今度は勉強のために睡眠2~3時間。しかも落第すればクビなのだそうだ。

「だから、もう少し普通の仕事がしたいと思いまして」と、Rさんは淡々と語るのだった。私は頷くしかなかった。最初は無愛想なだけに見えたが、これは腹の据わり方が違うのだと思った。Rさんを面接した企業も同じように感じたらしい。Rさんが志望したのは全く未経験の業種で、先方も始めは渋っていたのだが、面接を終えると一転して「ぜひ迎えたい」と内定が出たのだ。

未経験でも入社できたのは、ぎりぎり第2新卒の範疇に入るRさんの年齢のせいもあったろう。しかし企業をその気にさせたのは、過酷な環境の中でRさんが培ってきた、プロジェクトリーダーとしての素養である。ハードな仕事の渦中に居る時は、なかなかその意味が見出せない。だが他の転職者の皆さんを見ても、振り返れば必ず何かが身についているものだ。

同じ辛い仕事でも、やっておいて良かったと思えるような働き方をしたい。私も今、心からそう思っている。