『 無目的転職者の法則 』
当メール新聞の編集人のS君が、先日私に意地悪な質問をしてきた。「人材コーディネーターのルートやノウハウをもってしても、成功させられない転職者って、やっぱたくさんいるんですか?」。キミの転職の世話だけはすまいと心に決めながら、私は正直に答えた。いる。確かにいる。それもキミの言うようにたくさんいると。私たちが、何をどうしたって成功へと導けない転職者。その代表格は「いい所があれば転職したい」と言う人たちである。
私は彼らを無目的転職者と呼んでいる。“いい所があれば転職したい”の“いい所”に、目的が何もないからだ。じゃあ、あなたの考える“いい所”とはどんな所ですかと問いただしてみると、彼らは一様に答えに詰まってしまう。自分が何のために転職するのか、考えないままに行動しているのだ。
バブル華やかなりし昔は、それで通用した。もっと高い収入、もっと多い休暇、もっと体裁の良い仕事。多くの人と企業が共通の価値観で動いていた。だから漠然と歩いていても、当たりを引く確率が高かった。
しかし、今は違う。転職者の欲求すべてを満たしてくれる企業が激減したことで、転職は、非常に個人的な行ないになった。収入を減らしてでも、やりたい仕事に就く。反対に、やりがいを犠牲にしてでも生活の安定を図る…。何を取って何を捨てるか。転職者は自分なりの価値基準を作って、慎重に企業を選ばねばならなくなった。“転職目的”という価値基準があいまいなままに行動していると、入った後にババをつかんだと気付くことになるのだ。
しかも成功への条件は、さらに増えつつある。今は、ただ目的をはっきりさせるだけでは生ぬるい。たとえば、収入アップがあなたの目的だとしよう。すると、転職先に選ぶ企業は10項目ぐらいの条件をクリアしている必要があるのだ。業界に将来性はあるか。トップの考えは優れているか。キャリアプランは描けるか。商品に競争力はあるか…。要は、転職先の人事が「給料上がりまっせ」と言っても、これからは簡単に信用するなということだ。
「別に不満はないけどイイ所があれば行きたいで~す」なんて考えでは、スタートラインにもつけないのだ。これだけは覚えておいて頂きたい。
つくづく、ややこしい世の中になったもんだとお思いだろうか。確かに甘くはなくなった。でも、何も考えないで生きていける状況のほうが、ある意味、不幸だとも言える。自分は何のために働くのか。いろんな人々の中で、自分はどうありたいのか。流されやすい私たちは、厳しい環境に立たされない真剣に考えられない。今はたまたま、その機会を与えられているのだ。
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