『 ブランクの法則 』
人材エージェントである手前、私は日頃から転職者のみなさんにこう言い続けている。退社から転職活動開始までのブランクは極力無くすように。できれば就業中から活動を始めるように。空白期間が長いほど不利になるのです…と。しかし、長期の空白イコール絶対的に不利とは一概に言えないのだなあと思う出来事が最近あった。結局その人次第なのだと思わされる出来事が。
話の主は、37歳のカスタマーサポート係、Oさんである。Oさんはとあるソフトメーカーを退職後、転職活動を始めるまでに1年間のブランクがあった。その間何をしていたかというと、特に何もしていなかったそうだ。朝、奥さんが働きに出た後、家事を済ませて子供と遊ぶ。奥さんが休みの日は家族で海や山へ行く。“主夫”と言えば聞こえはいいが、プータローである。
私は最初、Oさんの話を聞いて頭を抱えた。断っておくが私個人は、Oさんの1年間の暮らしぶりについて「思い切って家族との充実した時を持つのもいいものなのだな」と感じる。だが“転職市場”というモノサシでOさんの1年間を測ってみると、答えは“かなり絶望的”になってしまうのだ。企業の視点で見れば、Oさんはスキルが停滞した就業意欲の薄い人、なのだ。
だがOさんは、それをわかっているのかいないのか、常に飄々としていた。何社かの書類選考に落ち、理由が“目的の認められない”ブランクのせいだと告げられる。普通ならその時点で“取り返しのつかないことをした”と自信を失ったり委縮してしまったりするものだ。が、Oさんは違った。あーあ残念ですと言いながら、にこやかに次の企業へ送る経歴書を持ってくるのだ。
結果は意外にあっさり出た。Oさんのことをある大手ソフトメーカーに伝える時、私は彼のあまりにも飄々とした様子をふと漏らしたのだった。するとその会社が、ぜひ会ってみたいと言いだしたのだ。さっそく面接がセッティングされた。面接では、役員が総出でOさんのブランクについて厳しく問いただしたのだが、それでも彼のマイペースを誰も崩すことはできなかった。Oさんはその企業に、サポート室チーフ職として採用された。
「決して自分を見失わない。あれこそサポート職の鑑でしょう」と、面接を終えた人事はOさんに感服していた。そうなのだ。Oさんは不利な状況でも決して平常心を失わなかった。“意味のない”と決め付けられたブランクを後ろめたく感じている様子もなかった。ブランクの1年間も含めて、どんな結果が出ようと自分は満足している、後悔しない、と彼は言っているように見えた。結局、ブランクの内容は問題でないのかもしれないと私は思った。どんな道を歩んできたのであれ、自分自身がそれをどう振り返るかなのだと。
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