『 業界不振とキャリアの法則 』
未経験の仕事への転職を希望する人の中には、「以前と同じ仕事を続けようにも、業界全体が低迷しているから不安で…」という人もいる。業界が落ち込めば、そこで働く人々のキャリアまで一緒に共倒れしてしまうのだろうか?決してそんなことはないと私は思う。
ある事例をご紹介してみよう。企業で研究員をしていたUさんの転職例である。Uさんの業界も低迷に苦しんでおり、彼は自分の会社に危険を感じて我々のオフィスへやってき来た。しかし転職すると言っても、不振なその業界からの求人は殆どない。Uさんは全く未経験の仕事に転向する覚悟をしていた。
「せっかくキャリアを積んできて、自分でも勿体ないと思うんです。でも仕方がない…。どんな仕事でもやろうと思います」と、Uさんは残念そうに言うのだった。だが私が提示した求人を見て、Uさんは驚いた。その求人は、コンピュータ系の企業がUさんの経験を求めているというものだったからだ。
なぜコンピュータ系企業が、コンピュータに縁もゆかりもなさそうなUさんを求めるのか。理由はこうだ。バイオ系の市場で、今後DNA解析による成果が期待されおり、同時にDNA解析用の複雑なコンピュータシステムの需要が高まっている。そのシステム構築にUさんの経験が必要なのである。
コンピュータ系企業は、システムの構築技術はあっても、DNA解析の仕組みはわからない。だからその知識があるUさんが不可欠なのだ。同じ内容の求人がコンピュータ系企業数社から来ており“選べる”ことにもUさんは驚いた。自分の経験は自分のいた業界でしか活かせないとばかり思っていたと。
人材ニーズは、そんな平面的なものではない。経験はどこかで活かせたりするのだ。また、Uさんの事例は決して特殊なものではない。業界の見通しが暗くなると自分のキャリアにまで絶望しがちだが、簡単にあきらめるのは早計だ。自分自身に対して、どんなニーズがあるのか。まずはそこからアンテナを張ってはどうだろうか。
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